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濱田達郎投手・鮮烈な“代役”完封勝利

 



 こんな展開になるとは誰も予想できなかったはずだ。5月7日の阪神戦。ナゴヤドームは、試合開始の4時間以上前から不穏なムードが漂っていた。「川上が腰痛、先発回避」。ただでさえ先発の駒不足に苦しんでいた上に、前夜は延長12回の激闘でブルペンも疲弊していた。迷った末に首脳陣が選んだのが濱田達郎。中3日のマウンドにして、プロ初先発だった。

「飛ばせるだけ飛ばしてくれ」というのが送り出した側の思いだっただろうが、結果は6安打、11奪三振で133球を投げ切った。「代役」の勝利は過去にも例はあるが、完封は史上初。もちろん濱田にとっては初勝利だった。

「こちらの期待以上に投げてくれました。点差があった(7得点)というのもありますが、危なげはなかったと思います」。息子世代の球を受けた谷繁兼任監督は、笑みを浮かべてヒーローを出迎えた。まさかの完敗を喫した和田監督は「球速以上に球が来ていた」と悔しがった。

 ただ、代役ではあったが阪神側にすれば「寝耳に水」でもなかった。ビジターの阪神が宿舎を出発する前に開いたミーティングの時点で「川上回避」の情報は伝わっており、濱田対策の映像と資料は用意されていた。いわば通常の「初物投手」として、阪神を封じ切ったのだ。

 結局、5勝3敗でシーズンを終了。8月に左ヒジじん帯を痛め、保存療法を進めている。11月1日に早々と更改した来季の契約は3.4倍増の1700万円(推定)。「故障しない体を作ることが、今の目標であり課題です」。記録にも、そしてファンの記憶にも残るベストゲームの立役者は、来季の復活を誓っていた。
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