ドラマの予感だ。
大嶋匠が、来季の新戦力候補に急浮上した。10月下旬から11月上旬にかけて行われた沖縄・国頭村での秋季キャンプ。期待の若手中心のメンバーの中に編成された。3年目で成熟し始めた持ち前の打撃力が、陣頭指揮を執った栗山監督から称賛された。大嶋も「一軍の戦力になれるようにしっかりやりたい」と強い自覚が芽生える。
異色の挑戦が、実を結ぶ気配がしてきた。早大ソフトボール部から野球へと転身、しかもプロの道へと進んだ。時の人となり、一部有識者からは否定的な意見もあったが、地道に己を磨いてきた。今季は公式戦最終戦の10月5日
楽天戦(札幌ドーム)で初の一軍デビューも果たした。黄金ルーキー松井裕に空振り三振を喫したが、大きな経験を積んだ。プロでやっていけそうな実感が湧いてきた。
秋季キャンプでは栗山監督が「誰が見ても分かるように、大嶋が伸びてきた」と名指しで評価された。今オフに稲葉が現役を引退、ミランダが戦力構想から外れて退団した。左の長距離砲が抜け、手薄なチーム事情。確固たる1番手が見当たらない左の代打も含め、大嶋のチャンスが広がってきた。「来季は札幌ドームでプレーしないといけない」と、決意も固い。
話題先行から、一野球人としての地位を築ける位置まで到達した。今季からは1人暮らしもスタート。「メリハリができて、良かった」とオンとオフを切り替えながら、野球に集中する日々を過ごしている。一塁手へ転向の可能性もあったが、希少価値が高い捕手として再度、勝負する。「(送球で)とにかく強いボールを投げられるようにしたい」。明確なサクセスストーリーが描けてきた。