守備といえば
菊池涼介だ。今季も何度もチームを救った。象徴的なのが4月8日、
巨人戦(マツダ
広島)のスーパープレーだ。同点の9回二死一、二塁。打者・亀井の放った打球は二遊間に飛んだ。菊池は素早くスタートを切ると、飛びつくようにキャッチ。本拠地独特のアンツーカーでバウンドが変わったが、柔らかいハンドリングでワンハンド処理。抜けていれば同点の場面だった。
さらに捕球後、何の迷いもなく三塁へ転送。オーバーランした三塁走者を見逃さなかった。アウトにこそできなかったが、流れを呼び込むビッグプレーだった。菊池は「絶対に捕ってやろうと思っていた」と振り返った。チームは7連敗中。漂い始めていたイヤなムードを消し去った。
緒方孝市監督も「心強いバックに助けられた」と最敬礼した。
ある投手は菊池の守備について「(打球の方向に)振り向いたらいる感じ。スピードも速くて、追いついてくれる」と語る。経験に基づくポジショニングと抜群の身体能力で、投手陣を幾度となく救う。また右翼を守る若手外野手も「ゴロではなかなか抜けてこない」と笑う。二塁手のシーズン補殺記録歴代1、2位を誇る守備にかかれば、打球が飛んでこないという感覚にさえもとらわれるのだ。
菊池自身が特別こだわってきたのが守備である。具体的な数字の目標を口にすることを避けてきた男が、今季あえて掲げた目標が「全試合出場」と「補殺の1、2、3位の独占」。14年のゴールデングラブ賞受賞が決まった際にも「現役である以上、ずっと獲り続けたい賞」と公言している。守備で流れを変える選手。赤い忍者の異名を取る菊池から目が離せない。