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カニザレス内野手・チームの躍進を支えた影武者

 



 堪え忍んだ最強の控え主砲だった。来日2年目のバーバロ・カニザレスは「七番・指名打者」で今季初のスタメン起用された8月13日のオリックス戦(ヤフオクドーム)で来日1号を放った。客席では前夜、来日した2人の姉とおい、めいが観戦。最高の舞台で最高のアーチをかけた。

「ホームランはどうしても打ちたかった。プレッシャーはあったけど、完ぺきな当たりだったね。少しスッキリしたよ」

 2004年にキューバから亡命し、06年にブレーブスと契約。09年にメジャー・デビューも果たしている。ただ、14年に来日したものの、役割は控えだった。どれだけ打とうが、一軍との間には大きな壁があった。外国人枠の4は李大浩と3人の投手で常に「満席」。5日のウエスタン・リーグ、広島戦(雁の巣)では1試合3発の離れ業も演じた。カニザレスという名の通り“甲殻”ならぬ“広角”打法でチャンスにもめっぽう強い。夏まではほかの日本人野手が昇格するのを指をくわえ、見ているしかなかったが、アピールを続け、首脳陣に「投手」枠を削らせるまでの存在感を示した。「腐らずやっていたと聞いているよ」と工藤監督はその勤勉さをたたえた。デーゲームで行われる二軍の試合が終わると、夜は食事をしながら、一軍のナイターを研究するのが日課。訪れないかもしれないヤフオクドームの打席を信じて、他球団の投手を映像で研究し続けた。

 9月15日現在で14試合、打率.333、1本塁打、3打点と目を見張る数字ではない。ただ、常に李大浩の影武者となり、準備をしていた努力は、チームの躍進を陰で支えた一因だ。
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