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寺原隼人 投手・投手陣の穴を埋め続けた縁の下

 



 寺原隼人は開幕前、工藤公康新監督の思い描く、パズルのピースには含まれていなかった。先発ローテーション投手に万が一があった場合の控え。それほどの扱いだった右腕が、最強の便利屋へと変貌を遂げた。「リリーフでは思い切り、腕を振ることを考えてやった。それが先発にも生きたと思う。思っていた以上にヒザの状態も良かった」。昨年6月の右ヒザ手術からリハビリの山を越えた。

 右肩を痛めた松坂、同じく右肩筋疲労の攝津が離脱し、5月5日のロッテ戦(ヤフオクドーム)で今季初先発のチャンスをつかむと、同24日の日本ハム戦(札幌ドーム)で7回無失点と今季初白星をつかむ。先発、中継ぎ、先発と交互にこなし、8月9日のロッテ戦(QVCマリン)では8回1失点で開幕7連勝。この時点の防御率は1.76と抜群の安定感で首位を走るチームの“貯金”に一役買った。4連勝を飾った後、6月29日の西武戦(東京ドーム)では一転、リリーフに回った。ただの中継ぎではない。勝利の方程式に組み込まれたのだ。2点差の7回から2番手で登板すると2イニングを完全投球。中継ぎの9試合は1勝0敗2ホールド、防御率は2. 03。「リリーフでもいい投球をしてくれた」と起用した工藤監督。開幕前とは一転、もはや欠かせぬ一枚になった。

 支えたのは地道なケアだ。少なくとも2週間に一度のヒアルロン酸注射は欠かせない。「正座もできません」。右ヒザをかばい、左右のバランスも微妙に違う。だからこそ、フォームに一層の意識を置いたことで好転した。「昨年と比べれば幸せだと思いますね」。FA移籍で13年に戻ってきた背番号20は、決して万全ではない右ヒザで工藤ホークスの縁の下を支え続けた。
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