まさに馬車馬のような働きぶりだった。端から見ている者がときに心配になるほど。
楽天の陰のMVPは
福山博之だ。「陰の」とつけることが、はばかられるほど重要な戦力に、間違いはないだろう。
「信頼して任されたマウンドでチームのために投げるだけでした。結果的に数字が残ったんだと思っています。チームメート、体をメンテナンスしてくれたトレーナーさんたちに感謝しています」
その風貌が演歌歌手の北島三郎に似ていることから、愛称は「サブちゃん」。2年連続で65試合登板を果たした。僅差のリードでもビハインドでも、勝利への可能性を信じて投げ続けた。防御率2.76と好成績を残した。もともと150キロ前後の球速が持ち味。今季はより効率よく打ち取るために
シュート系のボールをオープン戦から試投。負担を軽減しながら、打者を打ち取った。
2012年、当時在籍していた
DeNAから「投手としては」契約しないことを告げられた。類い希な身体能力を持っていた福山へ、野手への転向を打診した。しかし、これを拒否し放出された。受け入れてくれた楽天への感謝の気持ちは強い。
昨シーズンはオールスターゲームにも選ばれた。プロ初勝利を挙げた際には星野前監督(現球団取締役副会長)が「ヒーローインタビューをベンチの裏で見ていた。涙がこみ上げてきたよ……」と感動したという。
「中継ぎはタフな職場だけど、この成績を続けることが大事。過酷なのは覚悟の上だけど、やるしかありません!」。2年連続の最下位から脱出にはその鉄腕が必要不可欠だ。