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石川雅規投手・優勝を引き寄せた1勝

 



 14年ぶりの優勝への重い扉を開ける大きな勝利だった。9月27日、敵地で挑む巨人との天王山第2ラウンド。立役者は、チームの日本人選手最年長の35歳、石川雅規だ。

 前日26日に敗れ、巨人に1ゲーム差に迫られた。連敗は許されない局面で小さな左腕が立ち向かった。4回まで2安打無失点。5回の攻撃では、一死二、三塁の好機に打席に立ち、相手エースの菅野からタイムリーを放った。137キロのスライダーをバットの芯でとらえる執念の一打。その裏のマウンドでは代打・井端に犠飛を浴びたが1点で切り抜け、5回3安打1失点で自身6連勝の13勝目。チームに優勝マジック「3」を点灯させた。「菅野投手も中4日で気迫を感じた。僕も負けないようにと思って投げました。変な緊張感はなかった。むしろこの局面で戦えるというワクワクした気持ちでいました」と石川は振り返る。

 この2日前、38度の熱が出ていた。当日も微熱が残り風邪薬を服用するなか、志願の「中4日」でマウンドに立った。ヤクルトが最後に優勝した2001年の翌年に入団。一度も大きなケガをすることなくチームをけん引し続けてきた『小さな大エース』の、悲願の優勝への思いは誰より強かった。

 試合前。ベンチの前には野手全員で肩を組んだ円陣があった。野手最年長の34歳で、このとき秘かに今季限りで引退することを決意していたユウイチが真ん中で声を張り上げ、チームを鼓舞した。2対1。最後は両軍ベンチが全員立ち上がり見つめる緊迫戦で、敵地の歓声をはね返した。ベテランの意気が引っ張り、チーム一丸の思いが結実した勝利だった。
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