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ソフトバンク 攝津正投手・来季に示すエースの覚悟

 



 フリーエージェント(FA)権の行使手続きの期限を翌日に控えた11月9日、攝津正は本拠地・ヤフオクドームで記者会見に臨んだ。プロ7年目。今季初めて取得した国内FA権を行使せず、残留することを表明するためだった。シーズン中の、勝負に徹した鉄仮面とは別の顔。代理人と共に会見場に現れた攝津の顔は晴れやかだった。「プロを始めたチームだし、ずっとやってきたチーム。福岡という街も好きなので。これだけ多くのファンの方に応援されるチームはない」愛着、思い入れ。それが決め手だった。

 身を粉にしてきた。JR東日本東北からドラフト5位で入団し、1年目から2年連続の70試合以上登板。先発転向した3年目から5年連続の2ケタ勝利。評価されてしかるべき働きを、球団も認めていた。交渉の席で「ホークスはV10を目指している。そのためには攝津投手の力が必要」とメッセージを受けた。3年総額12億円(推定)プラス出来高の好条件も示された。現時点でははるか彼方のV10構想。そのために骨を埋めるか――。報道陣の問いかけに「そのつもりでやっていきたい」と述べた。

 チームはまず来季、V3を目指すことになる。勝ち星、イニング。端的な数字より、理念的なものを挙げた。「2年間、シーズンを通して先発ローテを守れていない。まずはそこから」。攝津のポリシーを物語る言葉だ。数字は自ずと付いてくる、などという陳腐な文言も、もはや不要。昨季は5月に右肩筋疲労、今季は6月に再調整で戦列を離れたことが、投手・攝津の心に消えない影を落としている。迎える34歳のシーズン。時の流れを逆行させ、強烈な自負を長いシーズンに満遍なく散りばめる。
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