背番号を120から65に戻し、
久本祐一は野球人生を懸けたシーズンに挑む。「レベルアップするつもりでやってきた。みんなと競争できるのも楽しみ。その競争に勝っていく自信もある」。11月12日、マツダスタジアムで行われた契約更改を終えた声は力強かった。役割は問わない。恩返しに燃えている男の再スタートだ。
我慢の時を経て、戻ってきた。2014年11月13日に球団と育成契約を結んだ。左ヒジじん帯の再々建手術を受けるためだった。シーズン中の復帰を目指して、黙々とリハビリに励んできた。7月下旬からシート打撃にも登板。シーズン最終盤を見つめ、球団内部で支配下登録を検討する動きまで出た。結局見送られたが、久本自身は順調に回復。そして8月8日のウエスタン・リーグ、
オリックス戦(由宇)で実戦復帰を果たした。
結局二軍では5試合に登板。計3回2/3を投げ防御率は4.91だった。だが残った数字以上の手応えがあった。「感覚が良くなった。ボール自体も戻ってきた」。シーズン終了後も投球練習は継続して行っていた。新球チェンジアップを含めて幅を広げようと試み、週に1度は二軍のキャンプでシート打撃に登板してきた。やるしかないとの覚悟の表れだった。
勝負を懸ける1年。ダメなら引退の覚悟も持っているだろう。「球団に感謝です。1年待ってもらって本当にありがたい。期待を裏切らないようにしたい」と意気込んだ。02年に
中日に入団して以降、支配下選手として送ったシーズンは13年連続でAクラスだ。ただAクラス請負人の目標はそこにはない。
広島を25年ぶりの優勝に導いてみせる。37歳で迎えるシーズンにもう一花咲かせる。