浮かれる様子はなかった。大粒の汗をぬぐい、
飛雄馬は表情を引き締めて言った。
「もっともっと信頼してもらえるようにならないといけない。これからも一球一打に集中してやっていきます」
野手部門でMVPに選ばれた宜野湾キャンプ最終日。プロ5年目で訪れた最大のチャンスに「ここで終わりじゃないので。続けないと意味がない」と決意を新たにした。
キャンプ中の実戦では34打数17安打と打ちまくった。
ラミレス監督が好む継続性を実行し、事あるごとに名指しで評価された。
「良いところが増えている。定位置を取る可能性は非常に高いと見ている」
遊撃が本職で、内野の全ポジションをこなす万能選手。正二塁手の石川が右ヒジクリーニング手術明けで、開幕に間に合うか微妙という事情もあり「飛雄馬の成長を見ると、彼が適任かもしれない」と代役、そして開幕スタメンの可能性にまで踏み込んだ。
昨年末に同僚の筒香らとドミニカへ渡り、野球観が変わった。「向こうの選手はとにかく野球を楽しんでいる。日本の素晴らしい環境で野球ができることに感謝していますし、僕自身も1日1日をムダにしないようにと思っています」
中畑前監督がかつて「飛雄馬の良さは、気が狂ったように声を出すところ。ベンチにいるだけで戦力になるよ」と絶賛したムードメーカー。
「去年までは結果しかなかった。結果を出すために、今年は何をすべきかが分かるようになった」と成長を実感できるまでになった。
キャンプ後の初戦、3月2日の
ヤクルト戦(横浜)でも2回の1打席目に中前へ先制適時打。打者11人で6得点の起点になった。伏兵から主役へ。一気に台頭しそうな予感だ。