投手出身、投手には一家言あるどころでない工藤監督は、就任して2年続けて
攝津正を開幕投手に指名した。
就任1年目の昨季は「僕だけではなくコーチの意見も入った中で。実績もあるし、ブルペンも見て」新人監督として少なからず、攝津が積み重ねてきたものに敬意を払った側面もあった。
2年目の今年は「昨年に比べて姿がいい」春季キャンプで連日ブルペン入りし、好感触を確信に変えようという姿が根拠だった。
工藤監督と投手・攝津。両者は必ずしも蜜月を築いてきたわけではない。就任1年目、特にシーズン前半。慎重かつ配慮に事欠かない物言いを心がけても、攝津への工藤監督の物言いは厳しかった。
30歳を過ぎ、キャリアの分岐点に差しかかっていると見るや、積極的にアドバイスもした。良かれと思っての行動に対して、攝津には攝津の自負があった。恩師と教え子のそれとは一線を画す、独特の空気が両者の間には流れる。
昨年6月から1カ月超の再調整。シーズン途中の出場選手登録抹消はその後も2度あった。工藤監督には、エースの離脱はご法度との感覚がある。禁忌を破って離脱「させた」のは、投手・攝津のキャリアを思えばこそで、不可避の判断。目をかけるということは、単に厚遇を意味しない。
オフに積み重ねたことは間違っていなかった。自己評価が辛口の攝津が「真っすぐの質に手応えを感じている。去年とは明らかに違う」と打ち明ける。
「年間、ローテを守り、勝ち星をしっかり作ってくれる人」
工藤監督の言う開幕投手の条件とはそういうことで、心中する覚悟がある。厳格な目。反骨心。それもまた、工藤ホークスの屋台骨を支えている。