何よりそのガッツポーズに
天谷宗一郎の覚悟が詰まっていた。開幕2戦目の3月26日。
DeNAを相手に今季初スタメンを飾った。6回一死一、二塁で内角球に体を回転。うまく右翼線に落とした。勝ち越し適時打だった。一塁ベースを回ると何度もガッツポーズが出た。
「スッと打席に入れた。よかった」
呼ばれたお立ち台では目をうるませながら言葉を出した。
プロ15年目。30試合の出場にとどまった昨季を終え、背水の覚悟でシーズンに挑んでいる。昨秋からバットを握り続け、春季キャンプでアピールに成功。オープン戦でも序盤から快音を響かせた。鈴木の故障もあり、チャンスをつかんだ。開幕スタメンこそ下水流に譲ったが、巡ってきたチャンスを逃すはずがなかった。
俊足、巧打。かつて期待の若武者だった。ポテンシャル、センスは抜群。だが、あと少しのところでつかみ切れず、棒に振ってきた。だからこそ天谷は言う。
「スキを見せないように。この1試合だけでなく、継続できるようにしないといけない」
けん制死、落球、走塁ミス。ボーンヘッドを犯してしまう自らを戒め、油断しないように集中力を高めている。
争う右翼のポジションについて「迷うよね」とは緒方監督。相手が左投手でも天谷をスタメン起用してきたのは、能力の高さを知っているからだろう。天谷はもう同じ轍は踏まない。33歳を迎えるシーズンで一気にレギュラーをつかむつもりでいる。