誤算といえば失礼かもしれないが、予想以上の結果を残したのが開幕先発ローテ投手ではなかった
小熊凌祐だ。プロ8年目の25歳が4月6日の
DeNA戦(ナゴヤドーム)で今季初先発すると、何とわずか93球という省エネ投球での1安打完封勝利。プロ入り初の完封勝利は、球団では2011年のチェン以来5年ぶりとなる2ケタ投球数での完封勝利という珍記録でもあった。
「この顔を見ていただければ。期待以上かな」と小熊を称えた谷繁監督の表情がすべてを物語っていた。春季キャンプは一軍スタートとはいえ、2月中旬には二軍落ち。オープン戦は1度も登板せずに二軍で過ごしていた。それが3月31日に今季初昇格を果たすと、同日の
広島戦(ナゴヤドーム)でリリーフで今季初勝利。その数日後、最高の形で2勝目を獲得した。
「出来過ぎだと思います。ただ今日は思ったところに投げられました」
こう振り返った小熊は昨年までの7年間でわずか3勝。昨年は先発に転向したが、1勝1敗に終わっていた。滋賀県出身の同学年には
楽天・則本がいる。年末に滋賀県のイベントで会うたびに差をつけられていた右腕が、あらためて追い求めたのは精度の高いコントロール。その日は相手の早打ちもあって序盤から凡打の山を築いた。
中日の開幕ローテは大野、山井、ネイラー、若松、浜田達、福だったが、4月中旬では大野、ネイラー、若松だけ。苦しい先発事情で飛び出たうれしい誤算だった。