終盤になると、大歓声を伴って出てくる。球場全体が、
赤松真人の存在を認めている。そういう次元まで来ている。今季はスタメン出場こそ1試合もないが、8月11日時点で67試合に出場し、10盗塁を決めている。チームでも5番目に多い数字だ。まして代走で出塁すれば、相手バッテリーの警戒レベルはMAXになる。そのなかで決める技術、スピード。まさに足のスペシャリストだ。
赤松自身は「単純に真っすぐ走るだけのタイムなら、僕より速い選手はたくさんいますよ」と笑う。ここ一番での集中力、そしてクセを盗む洞察力、観察力が圧倒的だ。その名前が
コールされただけで、恐れられる。バッテリーの配球にも、影響を及ぼしている。「足でメシが食えるのは、今のチームでは赤松だけ」と首脳陣。ヒザを立て、地面を削るように立って滑る「立ちスラ」は若手が目指す理想の形だ。
赤松に引っ張られるようにチーム全体も、走塁の意識が高まっている。チーム盗塁数はリーグ断トツ。足でかき回している。
今季は打でも見せている。緒方監督が「積極性も含めて打撃がいいのは知っている」と話すように、6月14日の
西武戦(マツダ
広島)ではサヨナラ打を放った。打率も4割近い。代走から守備に就き、回ってくればそのまま打席に。今や代走屋ではなく、貴重なバイプレーヤー。25年ぶりの歓喜を目指す緒方カープになくてはならない存在だ。