ここ一番の大勝負で経験値が染み渡る。代打の切り札・
矢野謙次。プロ14年目を迎えたベテランは、若手主体の布陣の中で異質の存在感を放つ。8月18日現在で、今季はすべて代打での出場で30試合。26打数5安打の打率.192と苦しんでいるが、その価値は変わらない。全幅の信頼を置く栗山監督は「ケンジがいるから、いろいろな手が考えられる。いるだけで大きい」と大胆なベンチワークを繰り出す肝となっている。
重要な局面で大仕事をした。16日の
オリックス戦(札幌ドーム)。そこまで無得点で2点を追う8回二死一、二塁。2球で簡単に追い込まれたが、粘って右前適時打。14打席ぶりの安打で勢いを付けて、直後に
レアードの決勝の逆転2点打を誘発した。
「ファイターズらしく粘り強く。ビビリながらも何とか気持ちが勝った」
今季は得点圏で再三の起用も本塁打と犠飛はあったが、適時安打は初。執念だけを命綱に大仕事をした。
昨シーズン途中にトレードで
巨人から移籍。水になじみ始めた今季は開幕から古傷の右ヒザの影響などで出遅れた。今も全力疾走、外野守備に就くのは厳しい状況。一振りにかけ、ベンチでは慕う若手たちを、大きな背中と熱い姿勢でまとめている。
「気持ちで食らいついていく。僕には、それしかできないですから」
天才肌のポテンシャルが高い若手が多い中で見せる、闘志あふれるパフォーマンス。残している数字以上の影響力で、化学変化を生む。