選手会長、捨て身の決断と言えた。8月18日の
西武戦(京セラドーム)。
長谷川勇也は約3カ月ぶりに先発で外野守備に就いた。守りに限らなかった。
「凡打でも全力疾走。そういう積み重ねで流れを持ってこられる。もう1回、基本的なことを」
折しも内川が腰痛で守備困難。チームは
日本ハムの猛追を受ける苦境にあった。その試合で重盗による本盗も決めた。
2014年オフに手術を受けた右足首の不安は長引き、昨季は大半を棒に振った。今季も五番打者と目されながら、DH起用が続き、ベンチを温める日も多かった。それでも「しっかり準備するだけ」とぶれなかった芯の強さが、3年ぶり2度目の2ケタ本塁打にも表れた。
グラウンド外でも日々、自問自答した。選手会長を松田から引き継ぐと、4月に球団の地元九州、熊本・大分で地震災害が起こった。
「少しでも笑顔になれる時間を」
災害翌日から球団に掛け合い、チャリティー試合の実施や、選手会による少年野球チームの招待の実現にこぎ着け、7月にはシーズン中では異例とも言える選手による被災地訪問を行った。
「本当はすぐにでも飛んでいきたかった。3連覇を成し遂げることで、いい報告を」
日本ハムの球史に残る追い上げで、願いはかなわなかったが、被災地への祈りを胸に戦い抜いた。
寡黙で職人肌。周囲は「本来は選手会長というキャラクターじゃない」と言う。それでも長谷川は長谷川らしく、確かな選手会長の像を描いた。