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オリックス 伊藤光捕手・悔しさをミットに込めて

 



 試練の1年だった。今季は開幕マスクこそかぶるも、若月の台頭もあり出場機会が激減。2度の二軍落ちも経験し、80試合の出場に終わった。つかみかけていた正捕手の座が手からするりと逃げ、また再び追う立場となった今季。伊藤光にとっては、さまざまな苦悩との闘いの年だった。

 4月中旬、二軍の試合には降格してきたばかりの伊藤の姿があった。ユニフォームの足元は、普段は見慣れないクラシックスタイル。「高校(明徳義塾高)以来かな?初心に戻ろうと思って」と、試合では早速、盗塁を刺してうれしそうな表情を浮かべていた。リード面の改善という捕手としては悔しい理由での降格だったが、それでも必死に野球と向き合った。

 シーズン後半は打力を生かすべく、一塁にも挑戦。2014年に捕手としてゴールデン・グラブ賞にも輝いたが「とにかく試合に出たい」という気持ちが、そのプライドを上回った。一塁用のグラブを用意し、選手としての可能性を広げた。シーズン終了後には若手選手とともにフェニックス・リーグへ。福良監督の「もう一度競わせたい」という意向で、若月と交互でマスクをかぶった。打率も.452(31打数14安打)とシーズン中のうっぷんを晴らす結果を残した。

 来季は節目のプロ10年目。選手会長の肩書は外れるが、貴重な生え抜きとしてチームを引っ張る役目に変わりはない。今季、味わった悔しさをミットに込めて、再び正捕手に返り咲いてみせる。
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