気がつけば10年目のシーズンを迎えていた。大卒入団ながら、一軍デビューは4年目と遅く、常に「クビになる」と、常に危機感とともにここまで過ごしてきた。
大きく人生が変わったのが2012年秋、サイドスローへの転向だった。翌年、イースタン・リーグで最多勝を獲得すると、14年、本格的に一軍の戦力となった。その年、20試合に登板。先発にも抜擢され、7年目で待望の初勝利も記録した。ここ2シーズンは、思うような結果を残せていないが、苦しみながらも、自分の居場所をはっきりと見つけ出した。“便利屋”というポジションである。
「僕の武器は、ロングもできるし、短いイニングもいけるし、連投もきくところ」
ゲーム展開、チーム状態によって起用される位置が変わっても、常に最低限以上の仕事は果たす存在は、間違いなく重宝される。実際、昨季も回またぎ、連投、ワンポイントと、さまざまな役割を求められ、安定した投球を見せた。途中、ケガで長期離脱したためわずか10試合の登板にとどまったが、防御率2.06と、飛躍的に成績を上げた。
監督が代わり、再アピールが必要だったが、オープン戦途中から一軍に合流し、4試合に登板。「スライダーがよく曲がるし、カウントも取れる。大きな武器だね。戦力として、十分」と辻監督からも太鼓判をもらった。今季も「変わらず、便利屋でいく」と、31歳右腕。開幕は二軍スタートとなったが、「いざとなったら藤原がいる」。首脳陣にとって、そんな心強い存在であることは間違いない。