まさに四番の仕事だった。4月7日の
西武戦(メットライフ)、1点差に詰め寄られた直後の6回、
内川聖一がこの日2発目となる豪快なアーチを放った。フルカウントから、相手エース・菊池が投じたのはインコースへ食い込むスライダー。これを鋭くクルリと体を回しながら、巧みに左ヒジをたたみバットの芯でとらえた。卓越した技術に裏打ちされた打球は切れることなく左翼席中段に着弾。
「1点差に迫られ、試合を動かさないといけないと思った」
責任感たっぷりの一撃で白星をもぎとった。
四番の一発で試合を決める――。他球団では普通でも、
ソフトバンクにとってはある意味でうれしい誤算だ。内川はこの日、初回にも3号の先制ソロ。昨季1号を放った開幕7戦目までに、今季は4本のアーチを量産した。
デスパイネが加入したが、工藤監督からは3年連続の四番に指名。三番・柳田、五番・デスパイネという長距離砲に挟まれるだけに「前後が素晴らしい打者。しっかりつなぐ」と、開幕直前にもあらためて『つなぎの四番』を公言している。だが三、五番が開幕から12試合を過ぎた4月13日の時点で計2本塁打という事態の中、広角打法が持ち味の男が、本来の四番らしく豪快なアーチでチームを助けている。
代打がメーンだったWBCでは、4年前の雪辱を果たすことができず、準決勝後のベンチで大粒の涙を流した。帰国後オープン戦はわずか2試合の出場。それでも、四番のバットで必ずチームの日本一奪回を成し遂げる覚悟だ。