ベテランのどこでも投げる覚悟は、チームにとって頼もしいことこの上ない
ベテランとは思えない一軍への思いを抱きながら、投げていた。8月24日の
西武戦(ヤフオクドーム)で7月23日の
ロッテ戦(同)以来の先発マウンドに立った
中田賢一は7回1失点の快投を見せ、6月8日の
ヤクルト戦(同)以来77日ぶりの6勝目を手にした。
プロ通算94勝の実績を持つが、8月10日の一軍復帰以降はロングリリーフ要員としてブルペンに待機。西武戦もローテの谷間を埋めただけで再びブルペンに戻ったが、不満を漏らすことはない。
「どういう形であれ、一軍で投げることは幸せ。僕は喜んでマウンドに上がる」
敗戦処理であろうと、チームが優勝に近づくことに貢献できるのならば、右腕を振り続ける。本格的な中継ぎ待機は
中日時代の2013年以来4年ぶりだったが、それを糧にできる男だ。
「
サファテや岩崎のピッチングを見て勉強できることもあった。中日では(守護神の)岩瀬さんのいいところを見ていました」
他人の長所を自分に置き換え、吸収する。再び、まっさらなマウンドへ戻ることを考え、見えないゴールを目指した右腕の努力は実を結ぶ。
「先発というより、中継ぎの1番手だと思って投げてほしい」と登板前、倉野投手統括コーチは話していた。余力を残さず、目いっぱい行ってほしいとのエールだったが、強力・西武打線相手に何度もピンチを招きながら最少失点で防いだ。
「これからもチームの勝利のために腕を振り続けたい」
ひたむきな男は、新たにつかんだそのポジションを誰にも譲らない。
写真=湯浅芳昭