ピンチの場面でマウンドに上がることが多い高梨
登板を重ねるたび、首脳陣の信頼は厚くなっている。変則左腕・
高梨雄平は、9月13日まで37試合に登板し、1勝0敗8ホールド、防御率1.01。シーズン序盤は左のワンポイント起用も多かったが、今では松井裕、福山に続く存在として、大事な場面を託されるようになってきた。
降格も必要な道だった。開幕一軍を果たしたものの、5月1日に登録抹消。それでも本人は「フォームが固まっていなかった。持って1、2カ月だと思っていた」と冷静に受け止めた。二軍でフォーム固めに取り組み、再昇格は6月7日。そこから8月10日に1点を失うまで、登板17試合連続無失点を続け、評価を上げた。
1年前には、今の状況を想像もできなかった。昨夏に腕を下げ、希少な左サイドに転向。結果的に、
楽天からドラフト9位で指名を受けたが、昨年の全国レベルの大会での登板は、11月の社会人日本選手権1回戦、NTT西日本戦の8回に打者1人を抑えただけだった。「地区大会では投げても、全国ではほとんど投げた記憶がない。(試合を撮影する)ビデオ係をしていた人間ですから」。遅咲きの花が、プロの世界で開いた。
大事な試合が続く終盤戦。ピンチを招いても、粘り強く投げ抜く姿が頼もしく映る。「(シーズン序盤は)フォームのことばかり考えて、打者と勝負する余力がなかった。今はどう攻めようとか、考えられる」。楽天投手陣に不可欠な存在となるため、残り少ないシーズンで結果を残していく。
写真=井田新輔