悔しさを成長の糧にする。重信慎之介は今季、昨季限りで引退した
鈴木尚広氏に代わり、代走のスペシャリストとなることを期待され、起用されてきた。ルーキーだった昨年とは違う。勝敗を左右する場面も経験した今季を「たくさんミスもありました。成功の中にある反省もありました。緊迫した場面で出ることで得られたことは、すごく多かった」と振り返る。戦力としての自覚と重圧が芽生えた1年となった。
どうしても忘れられない失敗が2つある。6月1日の
楽天戦(Koboパーク)。1点を追う9回無死一、二塁。重信は二走の代走で出場。
長野久義がバントを空振りし、飛び出した瞬間に捕手の送球により二塁で刺され、逆転のラストチャンスをつぶした。少しでも早いスタートを切ろうとする意識が、飛び出す原因となってしまった。
もう1つは8月6日の
中日戦(東京ドーム)の9回一死一、二塁。一塁走者の代走で出場したが、坂本勇の中飛で二、三塁間まで進み、ここから一塁に帰塁する際に、二塁ベースを踏まずに戻り(二塁ベースの空過)、アウトに。サヨナラ機から一転、試合終了。「絶対にアウトにはなれないという気持ちが強過ぎた」と、冷静さを保てなかった自身を責めた。
「緊迫した場面では視野が狭くなりがちなので、いかに平常心でプレーできるか。それが大事だと思います」
失敗からも、成功からも学ぶ。それを繰り返す。すべての経験が、重信にしかできない走りを築き上げる。
写真=BBM