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中日・モヤ モヤモヤしながら登録抹消/春の収穫or誤算

 

衝撃的なデビューを果たしたスティーブン・モヤだったが、5月6日に登録を抹消された


 誰もが驚くデビューだった。4月20日、広島戦。試合前のナゴヤドームに「四番・モヤ」のスタメンが発表されると、観客席にどよめきが広がった。試合後、その声は歓喜に変わる。1試合4安打でチームの連敗を5で止めると、21日は来日1号の決勝弾。22日も3安打。アメリカの市民権取得のため渡米したダヤン・ビシエドの代役は、3試合13打数9安打の大暴れで同一カード3連勝の立役者になった。

「いつも塁に出ようという気持ちでいる。モヤは大きいから本塁打、と言われてもね。小さなことでも、積み重ねれば大きなことになるものだよ」。身長201センチ。体に似合わぬ言葉どおりの着実な歩みで突如としてメーンステージに姿を見せた竜の巨人は、少年のような笑みを浮かべた。

 オープン戦では37打数5安打、13三振と苦しみ、開幕をファームで迎えた。しかし、腐ることなく、素直に自分を見つめ直す実直さもモヤの持ち味。二軍でも早出特打に取り組むなど、日本の野球に慣れるための努力を重ねた。それが結実した衝撃のデビュー3連戦だった。

 ドミニカ共和国のウインター・リーグで自ら発掘した森監督でさえ、この活躍には目を丸くした。「ちょっと驚いている。失礼になっちゃうけど、あまり期待していなくて……」。モヤが、主砲・ビシエドの不在を補い、ソイロ・アルモンテとの強力コンビを結成。ズルズルと連敗が続きそうな雰囲気を振り払った「第3の助っ人」が救世主となった。

 ビシエドの帰国後はライトの守備位置で出場を続けたが、絶好調も長くは続かなかった。広島相手に3連勝した翌24日の巨人戦(長野)では無安打。以降も安打は出るが、当初の爆発力は減退していった。

 5月5日の阪神戦(甲子園)では2安打1打点と気を吐いたが、翌6日(同)にライデル・マルティネスが先発するため、外国人枠の調整もあって登録を抹消された。現在、ライトの定位置を争う平田良介が好調で、外国人枠にはR.マルティネスにオネルキ・ガルシアの両投手、ビシエドとアルモンテがいて満員状態。再登録への道のりは険しいが、デビュー戦の衝撃のような、チームに勢いをもたらす存在が必要になるときが必ず来るはずだ。

写真=川口洋邦
オーロラビジョン

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