サヨナラ打を放ち号泣する山下をラミレス監督が迎えた。この1打は5月の「スカパー!サヨナラ賞」に選ばれている
涙のお立ち台となった。この日、一軍昇格を果たしたばかりの
山下幸輝が5月31日の
楽天戦(横浜)の延長10回二死二塁から自身初のサヨナラ打を放った。
打球が右翼手後方で弾むのを見ると、込み上げるものを抑えきれず、歓喜の輪を作った仲間の肩にもたれかかるようにして号泣。ヒーローインタビューでも鼻をすすりながら「もう喋れないです」と話し、球場一面の温かい拍手に包まれた。
この一打。2球で簡単に追い込まれながら指一本分バットを短く持ち直し、楽天・
松井裕樹の決め球スライダーに体勢を崩されることなく振り抜いている。これが今季の初打席だった山下は「二軍でずっと2ストライクアプローチをやってきた。追い込まれても大丈夫と思えるようになった」と言い、ラミレス監督も「2ストライクからヒザを深く沈めて対応したように見えた。スマートな打席だった」と成長に目を細め、翌6月1日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では相手の先発・
千賀滉大を相手にスタメン起用されている。
4年目の山下はチームに希少なユーティリティープレーヤー。しかし、昨年の送球ミスで首脳陣の信頼を失い、キャンプを二軍で過ごした。開幕直後に一軍に呼ばれたが、出番なく再び降格。厳しい立場は理解していて、一軍に呼ばれた際は同じく二軍で我慢の時を過ごした
関根大気に「ダメなら諦めるくらいの気持ちで行ってくる」と覚悟を伝えたと言う。若手の積極起用が目立つチームだが、苦労人の活躍はファンを大いに喜ばせた。
写真=大賀章好