左腕日本最速158キロの記録を持つ、チームだけでなく、日本が誇る屈指の速球王が菊池雄星だ。
現在27歳と、アスリートとして最も脂の乗る年齢でもあり、自ら「トレーニングマニア」というほど、ストイックにトレーニングを積み重ねてパワーもさらに増している。「160キロ」を期待する声も多く聞かれ、本人も以前から球速への意識は高く、大台は「目指したい。そのために、オフも練習している。いつかは出したい」と話す。
一方で、「でも、ここからの1キロ、2キロは、なかなか難しいです」とも言う。人一倍、勉強熱心のためフォームやピッチングに対しても、人間の肉体構造の部分から徹底的に分析し、研究し、作り上げてきた。その見地からも「左腕のほうがスピードは出にくい」ことも十分理解しているだけに、158キロからの記録更新が決して簡単ではないことを、誰よりも熟知している。
加えて、菊池は西武のエース。自分の記録以上に、チームを勝利に導くためのピッチングを最重要テーマに掲げており、試合中に球速だけを求めて投げることはないだろう。そういう意味でも、記録更新は高いハードルと言えそうだ。
それでも日本最速左腕は目を輝かせる。
「打者がどこまでも飛ばしたいのと一緒で、投手としては、(スピードを)何キロ投げたいという思いはロマンとして、持ち続けていたいと思います」
その夢を菊池が追い続けている限り、ファンの期待も続く。今季中にメットライフドームのスコアボードに「160キロ」が出るか――実に楽しみだ。
写真=BBM