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ロッテ・井上晴哉 信頼を得てついに覚醒したチーム待望の大砲/飛躍のシーズン

 

井上には四番としての風格が漂ってきた


 半信半疑だった。7月は全20試合に出場し打率.400、23打点、出塁率.500はいずれもリーグトップで、28安打もトップタイという成績を残した井上晴哉は、芽生えた自信と圧倒的に不足する確信のはざまでもだえていた。

「どうでしょうね。取れると思うんですけど行けますかね?」

 不安は月間MVPが発表される8月8日まで続いた。それもそのはずだ。その1カ月で放った7本塁打、23打点はともに、それまでのシーズンにおけるキャリアハイを軽く超える活躍だったからだ。

 プロ1年目だった2014年の開幕戦で四番を任された大砲候補。その才能を開花させた一番の要因は「信頼」だ。今季から就任した井口資仁監督は開幕から井上を使い続けた。「調子が悪くなればすぐ落とされた。その不安がなくなったと思う」と指揮官。

 これまで“春男”と呼ばれ、開幕前後はレギュラー級の輝きを放っていたが、長続きすることのなかった背番号44の心の中にあった“不安”が消える。「1試合1試合、勝つためにやった」。ちょっとしたことで、人間は変われる。それを自ら証明した。

 久しぶりの和製大砲の出現に球団は、1986年の落合博満氏以来となる日本人選手32年ぶりの30本塁打を達成すれば「32年分」のチョコレート製品を贈ることを決定した。「もし、そうなったら自分は1年分だけもらって、残りは広島に届けたいと思っています」。7月に豪雨の被害にあった地元・広島を思い、バットを振る心優しき29歳でもある。

写真=BBM
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