「代走・増田大輝」のアナウンスは、勝負が動き出す合図だ。172センチ、68キロの背番号「0」は、足で相手守備をかき乱す。
「ベンチの『1点を取る』という期待に応えられるように、必死でやるだけだと思っています」と話す育成出身、支配下4年目の27歳。昨季途中から一軍に定着し、今季は代走の切り札の地位を確立した。
9月10日時点でリーグ1位の
近本光司(
阪神)の17盗塁に次ぐ13盗塁。出場48試合のうち先発は5試合で、安打も盗塁の半数の7本というスーパーサブが、堂々とセ・リーグの盗塁王争いを演じている。
8月13日の
ヤクルト戦(東京ドーム)では同点の9回無死一塁で代走起用され、次打者の2球目に二盗に成功。
亀井善行のサヨナラ打でホームを踏み、「100%、決められる自信があったので走りました。代走で出たときにすごい声援が聞こえます。力になりました」とファンに感謝した。こんなシーンが何度も繰り返され、代走のスペシャリストとして存在感を示している。
1点を争う場面で代走を告げられ、相手バッテリーの警戒をかいくぐって盗塁を決める。野手のスキを突く進塁や捕手のタッチをかわす巧みなスライディングでのホームインもある。若き仕事人に、
原辰徳監督も「集中力、決断力、勇気。非常に彼の野球選手としての格が大きくなった。見事」と目を見張る。
プロ入り前には野球から離れ、とび職も経験した異色の経歴を持つ増田大。“控えの盗塁王”が誕生する可能性は、十分にある。
写真=BBM