抜群のスピードが日の目を浴びるときが来た。松原聖弥は一軍デビューを果たした今季、「いつでも最後と思って、毎日やっています」と必死の思いでチャンスをつかもうとしている。
8月18日の
阪神戦(東京ドーム)で「二番・右翼」としてプロ初先発を果たして以降、主に二番で先発起用されるようになった。同25日の
ヤクルト戦(神宮)で初の3安打、翌26日の同カードでも3安打。9月に入ってやや失速気味ではあったが、後半にさしかかり、再び安打が出始めており、一軍で結果を残せる実力を証明している。
「野球人生は、悔しい期間のほうが長かったんです。見返してやろうという気持ちが糧になっています」
エリート街道を歩んできたわけではない。故郷の大阪を出て宮城の名門・仙台育英高に進むも、3年間控えだった。卒業後は首都大学リーグ2部の明星大に進み、4年間で通算1本塁打(ただし、2年春から5季連続ベストナイン)。2017年育成ドラフト5位で巨人に入団し、サクセスストーリーは始まった。
1年目から三軍で100試合に出場し、45盗塁をマーク。18年の7月30日に支配下登録を勝ち取った。同年は年間134安打のイースタン・リーグ記録を更新するなど、潜在能力に磨きをかけた。
今季の一軍デビュー後は、ライトゴロでアウトを奪って脚光を浴びた試合もあり、攻守走で見せ場を作ることができるのが最大の魅力。今季はまだ盗塁は5つだが、内野安打や三塁打で見せる快足は、強打者が居並ぶ巨人打線では貴重な存在と言えるだろう。
「頼もしい先輩、後輩が後ろの打順にいるので、何とかチャンスで回したい」と松原。25歳の韋駄天ヒットメーカーは、まだまだ大きな伸びしろを残している。
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