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ソフトバンク・東浜 巨 恩人に頑張っている姿を――/ラストスパートに懸ける

 

シーズン終盤に向けてギアを上げる東浜


 少しだけ胸のつかえが取れた。シーズンも3分の2を消化しようというチーム77試合目。9月17日、札幌ドームでの日本ハム戦で東浜巨は今季最長の8回を投げ、開幕戦以来の無失点に抑えた。0対0のしびれる展開。走者を出しても身上の粘りを発揮した。9回に味方が2点を先制し、手にした4勝目に重みがあった。

 8年目の今季は、千賀滉大の長期離脱で初の開幕投手を務めて始まった。もっとも、自身も右ヒジ手術明け。思うような投球ができず、球数のかさむ苦しい内容が続いた。延期された開幕から2カ月余りがたった8月末には、首の張りで登板を飛ばす。「1年間、先発ローテで回りたい思いでやってきた。悔しかった」。9月の復帰登板も、断続的に雨が降る悪条件とはいえ、やはり球数を要して最低限の仕事に終わった。

 ここへ来てようやく投球そのものに心を砕くことができるようにもなってきていた。スムーズなフォームを求め、キャッチボールから捕球、投げるまで同じタイミングで投げようと意識。「フォームに意識を向けずに投げられるのが一番の理想。自ずといいリズムで投げられると思う」。そうして徐々に自身の投球を取り戻した。

 4勝目を挙げた日本ハム戦の直前、川村隆史三軍コンディショニング担当が急逝した。試合後、川村さんに思いを馳せ、東浜は涙が止まらなかった。「入団してからずっとお世話になっていた方なので……」。プロの壁にぶち当たって思い悩んだ3年目、川村さんに相談。アメリカ・ロサンゼルスでの自主トレが実現し、翌年からの飛躍につながった。「試合は続く。悲しいけど、しっかり頑張っている姿を見せ続けるのが僕らの仕事」。故人に手向けるウイニングボールを手に、視線は先を見据えた。

写真=高原由佳
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