8年ぶりのAクラスとシーズン勝ち越しに暗雲が立ち込めていた。10月27日の
阪神戦(甲子園)から6連敗。守護神のR・
マルティネスが左脇腹痛で離脱して、盤石を誇った救援陣にほころびが生じていた。30日の
広島戦(ナゴヤドーム)では7回以降に15失点。6回終了時にリードしていれば負けない「不敗神話」は37でストップした。
窮地を救ったのは正捕手の座をつかみつつある28歳だった。負ければ4位に転落していた11月3日のDeNA戦(同)で6号ソロを含む3安打2打点。お立ち台に上がった木下拓哉は「先週1勝もできなくて……。でも、週も変わったし切り替えていきました」と声を張り上げた。
6連敗の責任を感じていた。「全部僕がマスクをかぶって負けた。何点差でもいい。何点取られてもいい。とにかく勝とう」。固く硬く誓う一方、先発の福谷には自分の感情が伝わって変な重圧にならないようにいつもと変わらない態度を心掛けた。
6回を終えて4点リード。7回に1点を返され、なおも二死二塁から継投に入った。谷元が適時打を許して2点差。8回は福が一死から2本の長打で1点を失った。疲労の色濃い左腕がそれでも二死三塁までこぎ着けると、救援した又吉が3球でピンチを切り抜けた。
差はわずかに1点。助けたのが木下拓のバットだった。8回一死二塁で左前適時打。送球間に二塁に進み、井領、大島の連続内野安打で生還した。「どの投手もリードを守ったまま帰ってきたので、もう1点取れて良かったです」。
最後は祖父江が1点を失いながら逃げ切って連敗ストップ。チームはここから3連勝で3位を確定させた。瀬戸際での踏ん張りが暗黒時代に終止符を打った。
写真=BBM