自身最多となる53試合に登板し30ホールドポイント。プロ5年目にして最優秀中継ぎのタイトルを獲得。福敬登は勝利の方程式の一角として確固たる地位を築いた。
来季はさらに責任を負うことになる。ただ、その心境はというと、「今は正直、期待しないでくださいと思っています。期待させて裏切ったときの周りの声、憎悪が怖いです。こういうネガティブな気持ちになるのも、本当の意味でプロ野球のレベルの高さ、一球の重みというのを感じたからだと思います」と明かす。
打ち込まれる試合が続いた10月下旬のこと。荒木内野守備走塁コーチに「真のプロ野球の世界へようこそ。ここで踏ん張ってさらに化けるのか、このまま打ち砕かれるかは自分の努力次第」と言われた。
プロ通算2045安打をマークし、名球会に名を連ねる先輩の言葉は胸に響いた。真のプロの世界――。最後はなんとか立て直したが、来年以降が本当の勝負と分かっている。
「今のままではダメだと思っているので、開幕までに自信を付ける練習をしていきたいと思っています」。責任を背負う覚悟はこれから培っていく。
8月から使用したグラブには、『ハクナマタタ』とアルファベットで刺しゅうを入れてある。入団当初からの座右の銘は「なんとかなる」。ハクナマタタはスワヒリ語で「なんとかなる」という意味の言葉だ。
6月には第一子となる長女が誕生。千史夫人と生まれてきてくれたことに感謝し、楽しく育てようと決めた。そのとき夫婦がライオンキングに登場するティモンとプンバァに似ていると思い、ハクナマタタを選んだ。この言葉で前を向き、苦しいときも乗り越えた。重責を担う来季も、きっとなんとかなる――。
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