期待通りとは言えないタイトルホルダーコンビの合間を縫って、スルスルッと勝利の方程式に組み込まれると、いつしか8回の男に定着した。8年目の又吉克樹が開幕からベンチの信頼をつかんでいる。
象徴的シーンは5月1日の
巨人戦(東京ドーム)。先発・小笠原が6回途中で降板。藤嶋、谷元とつないだ1点リードの8回。マウンドは又吉だった。大城、代打・亀井、梶谷を3人斬り。ベンチ前でチームメートに笑顔で迎えられた。
祖父江と福、昨季の最優秀中継ぎ投手のタイトルコンビを固定できないチーム状況は苦しい。祖父江は開幕当初こそ抑えを任された。コロナ禍で来日の送れた
R.マルティネスの合流後、起用は流動的となっている。福はボールの走り、強さを取り戻す段階にある。
又吉は開幕から好調だった。4月までの登板14試合で1失点。防御率は0点台。「任されたところで抑えるだけです。先発からつないだバトンを無失点で渡したい。僕は便利屋でいいです」と話す。
そんな右腕に対して与田監督は大きな信頼を寄せる。「安心して見られます。投球フォーム変更に取り組できた。自分なりの研究が実を結んできた」と話す。
オフには都内で動作解析を行いイメージとフォームのギャップを埋めてきた。「思っていることと体の動きのズレをなくしたいんです」と又吉は語る。
5月4日の
DeNA戦(バンテリン)で自身350試合登板。中堅リリーバーが竜の台所事情で生きる。5月24日現在で22試合に登板、15ホールドで防御率は0.89。まさに頼れる便利屋だ。
写真=BBM