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森監督見たか!四番のはずが三番になり最後は六番。秋山幸二のバック宙は怒りの表現!?

 

文=平野重治


 日本シリーズはソフトバンクが勝利したが、映像的には、今年もこのシーンを上回る驚きのビッグショットはなかった。

 これはもちろん、あまりにも有名になった86年シリーズの西武秋山幸二外野手のバック宙(バック転とも)ホームインのシーン。1986年の西武-広島日本シリーズは、初戦引き分けたあと、広島が3連勝、西武が4連勝という劇的展開、史上初の第8戦決着と、話題満載のシリーズに。それを象徴するのがこのシーンだった。第8戦(広島市民) は5回を終わって2対0と広島のリード。広島の先発・金石昭人は、3回に自らのバットで2ランホーマー。乗りに乗っている。このまま広島が押し切るか?しかし、6回、西武は一死一塁で秋山が初球を思い切りたたいて左へ同点2ラン。試合は振り出しに戻った。

「ちょっと上がり過ぎたので心配だった。入って良かったよ。(バック宙ホームインは)昨日から考えていたんだ」と秋山。試合は8回に西武がブコビッチの中越え二塁打で決勝点を挙げ、3対2で史上初の8戦シリーズを制した。

 まさに値千金の秋山の2ランだったのだが、第7戦までは、30打数5安打、打率.167と極度の不振。三番でスタートしたシリーズだったが、森祇晶監督は第5戦から六番に落とした。秋山は、第8戦決着となったことでもう1度リベンジのチャンスが与えられた。「ようし、ここで打って、みんなをアッと言わせてやる」とバック宙ホームインを考えていたのだった。もっとハッキリ言えば「森さん、見たか!」だった。

 秋山はこのシーズン、四番に定着。130試合にフル出場し、ともに自己最多の41本塁打、115打点。まさにザ・四番。ところが、10月7日のロッテ戦(川崎)でそれまで三番のルーキー・清原和博がなぜか四番に入り、秋山は三番に。清原はそのまま最終戦まで四番を打った。日本シリーズ第1戦も清原が四番。清原が31本塁打、打率.304の大活躍を見せたとはいえ、秋山には屈辱の三番、六番だった。これはもうバック宙で「見たか!」しかなかったのだ。球審は五十嵐洋二。
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