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六大学の仲間に囲まれ、威力を発揮した堀本律雄の“ド真ん中投法”。ホンダのジェット機ではないが逆転の発想が日本人の生きる道!

 

文=大内隆雄


 小社の資料室で、1960年の巨人主力選手の絵柄の平凡なショットを見つけた。中央のルーキー・堀本律雄投手(立大-日本通運)は、「巨人を選んでよかった」という表情である。左の長嶋茂雄三塁手は立大の1学年後輩で、前年の首位打者。右は藤田元司投手で慶大のエース。学年は1つ上。前年のMVP。立大では実績と呼べるものがなかった堀本だが、気安く「ガンちゃん」「シゲ」と呼べる仲間がいる巨人は、学生時代に戻ったような、自分の家に帰ったような気分だった。

 監督は六大学出身者には目をかけてくれる慶大OBの水原茂。「やるぞ!」と堀本は奮い立った。

 堀本のピッチングの特徴はあくまで強気なこと。評論家時代の堀本に筆者はよくこう聞かされた。

「ピッチングは度胸や。相手が打たんと思ったらド真ん中へほうりゃええ。もし打たれたら?アホか、打たんと思うからほうるんや。そこが肝心や」

 打者は「ド真ん中」というボールだけは頭から消している、とよく言われる。それなら、そこを使わないのは損というワケだ。いわば逆転の発想。ホンダが独自開発した小型ジェット機は、エンジンを主翼の下ではなく上につけることで、エンジンを支える部品を減らすことができ燃費が17%も向上したそうだ。「空気抵抗が大きく、エンジンを主翼の上に付けるのはムリ」という“常識”を逆転の発想と技術力で打ち破った。

 日本社会の生き延びる道はこういうところにあるのではないか。堀本は“ド真ん中投法”で、大胆にプロ野球に斬り込んだ。で、この写真の8月までには、もう20勝。結局、29勝という素晴らしい活躍で最多勝、新人王、沢村賞のトリプル受賞。防御率は2.00で惜しくも2位。69試合、26完投、31交代完了、364回2/3投球回はいずれもリーグ最多。“逆転の発想”の勝利だ。

 しかし、翌61年、川上哲治監督となると、度胸と気合の投球にストップがかかった。ドジャースの戦法は確率の野球。加えて「大学出で固まるのはチームワークを乱す」という川上の考えがあった。11勝、7勝と成績を下げ、大毎にトレード(63年)。堀本はその年15勝して(チーム最多)川上を見返した。

 写真は、トレードを通告された直後の62年の納会での堀本(右)。左は長嶋。さて、巨人を選んでよかったのかどうか……。

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