邦画界の鬼才・鈴木清順監督が亡くなった。93歳だった。この人の作品のトップ3は『殺しの烙印』『けんかえれじい』『ツィゴイネルワイゼン』だと勝手に思っているが、新聞各紙の追悼記事で、あまり得心のいくものはなかった。2月23日付の朝日新聞「天声人語」には、ちょっと首をかしげた。「たぐいまれな色彩美と無常感に支えられた作品世界が熱狂的なファンをつかんだ」。『ツィゴイネルワイゼン』を評した個所だが、こんな紋切り型じゃあ、あまりにも漠然として作品のイメージを喚起できない。あの作品は「食う映画」であって、大谷直子がちぎりコンニャクを山ほど積み上げたり、藤田敏八と大楠道代がうな重を無表情でパクつく
シュールなシーンに、苦い笑いを誘われればいいのである。
同じ「天声人語」の末尾のところで「(清順さんが)隅田川沿いを車椅子で散歩する」云々も、ちょっとまずいんじゃないですか。足が不自由で歩けない人の・・・
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