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【大学 University】

全日本大学野球連盟監督会
新生大学ジャパンスタート
社会人とタッグを組んで強化を
明大・善波監督が大学日本代表を指揮

1月22、23日の2日間にわたり、神奈川・横浜市内のホテルで平成25年度大学野球監督会が開催された。
初日の全体会では大学日本代表新監督に明大・善波達也監督が就任することが発表され、昨秋のBFAアジア選手権日本代表の小島啓民監督より大会の結果報告が行われた。
今後は、14年に韓国・光州で開催されるユニバーシアードでの金メダル獲得を目標に、強化を進めていく。
(リポート/新ヶ江周二郎)

 新生大学ジャパンの監督に、明大・善波達也監督が就任する。任期は通例の2年より1年長い異例の3年。今夏には第39回日米大学野球が控えており、15年に韓国・光州で開催されるユニバーシアードで金メダルを目指すことになる。「点を取らないと試合では勝てない。投手を中心に安定した試合運びができるチームにしながら、各大学の選手たちの特長をうまく生かしていきたい」

▲大学日本代表の監督に就任した明大・善波監督[写真=BBM]



 期待の選手として、昨秋のアジア選手権日本代表に選出された九州共立大・大瀬良大地(4年・長崎日大)、富士大・山川穂高(4年・中部商)、早大・吉永健太朗(2年・日大三)の名前を挙げ「3年間というスパンでチームを考えたとき、どの学年を中心に選考するか」と話した。

 任期が3年間となった背景には、世界大学選手権の開催が不透明となっている現状がある。2002年から隔年で5度開催されてきたが、昨年7月の第6回大会(台湾)は直前で中止となり、「次回もおそらく開催はないと思う」(内藤雅之全日本大学野球連盟事務局長)。一方で、15年の韓国、17年に台湾・台北で開催予定のユニバーシアード(国際学生競技会)では、主催国の選択競技として野球の採用が決定。さらに、14年にはIBAF主催でU-21世界選手権(開催地は未定)の開催も決まっており、日本における“大学生世代”の大会は転換期を迎えつつある。そのため、ターゲットを「(15年の)ユニバーシアードで金メダルを取る」ことに設定した“善波ジャパン”は、任期3年で出発することとなったのだ。

 任期が1年伸びたことは、「チームを成熟させるためには大きい」(善波監督)反面、前述のように選手選考の難しさは増すだろう。また、コーチ人事も簡単ではない。この日発表された新陣容は、善波新監督のみ。新コーチは、2月8日に岩井美樹全日本大学野球連盟会長らとの会談を経て決定するという。「岩井会長、各大学の方々と話をしながら決定しますが、任期が長い分、3年間やれる方と、単年の方が出てくると思う。その中で、チームの方向性を見失わないようにしなければいけない」。指揮官が思い描く大学ジャパンは、これまで以上に大学球界全体との連携が重要となってきそうだ。

 一方で、頼もしい“援軍”もある。同日に昨秋のアジア選手権の結果報告を行った日本代表の小島啓民監督は、「大学生を含めた日本球界全体のレベルアップを考える必要がある」。今後も、国際試合で生まれた課題などを共有しながら、両者のつながりを強めて考えを示した。

 今夏は韓国遠征を行った後、日米大学野球に臨む。日の丸を胸に戦うヤングジャパンが、新たなスタートを切った。


【大学 University】

東大・桑田特別コーチが初指導
ノック、ピッチングに汗
連敗脱出の救世主となるか
「赤門軍団」に桑田イズム注入

1月27日、東京六大学リーグに所属する東大野球部の特別コーチに就任した桑田真澄氏(元巨人ほか)が、東京・文京区の同大グラウンドで初指導を行った。
リーグ戦では昨秋まで46連敗中で、30季連続最下位に沈んでいる同大。
。今春から浜田一志新監督が指揮を執る「赤門軍団」に、再建へ向けて桑田イズムが注入される。

 1月27日、東京・文京区の東大グラウンドで約5時間半に及ぶ指導を終えた桑田真澄特別コーチ(元巨人ほか)の表情は、驚きと充実感、そして今後への期待に満ちあふれていた。「(東大の選手は)背が低くて細いイメージがありましたが、体格も良く上手な選手が何人もいました。良い意味で裏切られましたね。時間が許す限り、毎日でも来たいです。まずは1勝、一日でも早く連敗を止めたい」

 午前10時前からノックバットを握り約1時間半、そして自ら遊撃の位置に入り見事なグラブさばきを見せると、ハイライトはマウンドで見せた投手陣への投球指導だった。「球に回転がかかっているから、速く見える。回転を与えるためには、体全体の体重が乗るポイントで投げることが大事。そして、その回転次第では直球も3種類の変化球になる」

 球速120キロ前後の直球を、きれいな縦回転、スライダー、シュート気味と投げ分ける。リリースポイントでスピンのかけ方を工夫するだけで、球の質が変わることを実践してみせた。さらに、“レインボール”と呼ばれた縦に大きく割れるカーブも披露するサービスぶり。すべては、東大ナインに無限の可能性を感じているからなのだろう。

▲投手陣への指導時には自らマウンドへ。現役時代を彷ふつとさせるフォームから約60球を投じた[写真=藤井勝治]



「僕も(身長が低いという)ハンディを乗り越えるため、常に考えながら練習をやってきた。東大の選手たちは体格や技術、実績はほかの大学に劣るけど、日本で一番考えられる集団ですから。勝つためにどうすればいいのかを伝えられればいいですね」

 午後には教室でパソコンとスクリーンを使用し、金田正一ダルビッシュ有ら、自ら作成した名投手約20人の資料写真で投球フォームを比較。たっぷりと“講義”を受けた東大ナインは納得の様子だ。1年春からリーグ戦に登板し、昨年10月に右肩を手術。大学ラストイヤーに復活を目指す鈴木翔太投手(4年・時習館)は、右ヒジの故障を乗り越えた桑田特別コーチの投球フォームを間近で見て「フォームについて、良いイメージを持つことができた」と、笑顔を浮かべた。

 昨年11月に監督に就任。現在、30季連続で最下位に沈み、リーグ戦では46連敗中のチーム再建を託された浜田一志監督も「下手な選手は上手な選手をマネすることでうまくなる。桑田さんに目の前でお手本を見せていただいたことが、なによりも大きかったと思います」。監督就任直後に明大OBの今久留主成幸氏(元横浜ほか)を特別コーチとして招へい。同氏から、PL学園高時代にバッテリーを組んでいた桑田特別コーチを紹介されると、東京六大学連盟の承認を得て今回の指導を実現させるなど、指揮官も連敗脱出意欲を燃やしている。

 これで、2011年春から特別コーチを務める谷沢健一氏(元中日)に続いて、3人の元プロが指導陣に名を連ねることになった。連敗脱出、そして「赤門旋風」再来へ――。日本最高学府の難関を突破した頭脳集団に注入されるプロの技術。その“化学反応”の結果を待ちたい。

▲練習後に行われた会見では、東大・浜田新監督とがっちり握手。連敗脱出へ気持ちを新たにした[写真=藤井勝治]

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