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【大学 University】

注目大学生クローズアップ
関谷亮太[投手/明大4年]

スタイル貫いた日米大学MVP右腕

 メジャー予備軍を手玉に取った。日本が2大会ぶり17度目の優勝を果たした第39回日米大学選手権。大学4年にして初めて日の丸を背負った明大・関谷亮太(日大三)が、大会MVPを受賞した。第3戦の先発を任されて7回途中2失点で勝利投手。2勝2敗で迎えた最終戦では3対3と追いつかれた4回表一死一、三塁から救援する。1点も許されない場面で後続を封じると、その裏に日本は勝ち越しに成功。9回一死まで2安打1失点に抑え今大会2勝目を挙げ、優勝に大きく貢献した。東京六大学リーグにおいてタイトル受賞経験のない男が、文句なしの栄冠である。

「目の前の打者一人ひとりを、アウトに取ることに集中しました。前回(第3戦)の登板で、相手打線が自分の投球に対応できていなかったので、スタイルを変えることなく攻めました。MVP? 正直、自分が取れるとは思ってもいませんでした」

▲タテに落ちるチェンジアップを武器に、日米大学選手権でMVPを獲得した関谷[写真=田中慎一郎]



 関谷がアメリカ打線に通用した理由は、変化球に尽きる。140キロ中盤を計測するキレの良い真っすぐと、チェンジアップとのコンビネーションがさえ渡った。アメリカに限らず、外国人打者相手には、タテに落ちるボールが有効なのだ。関谷のチェンジアップは、日大三高の2学年後輩である早大・吉永健太朗(2年)が、握りを参考にしたことでも知られる。吉永は自らでアレンジを加えてシンカーとし、高校3年夏に全国制覇を遂げる伝家の宝刀とした。

 大学日本代表24人をセレクションする選考合宿は、本調子でなかった。紅白戦2試合で計3イニングを投げ4失点。3季ぶりのリーグ優勝から、準決勝進出の大学選手権と実戦が続き、疲労のピークだった。しかし、3日間の合宿だけでは判断できない魅力が、関谷の投球スタイルにあった。大学日本代表首脳陣は「対アメリカには欠かせない戦力」と絶対的な自信を理由に、侍ジャパン入りを決めた。

 プレートから本塁まで18.44メートルを巧みに利用。打者との間を考え、微妙にタイミングを外す工夫を施した。「リーチの長い打者に対して、届かないコースに気を使った」。クレバーなマウンドさばきだけでなく、喜怒哀楽を見せない寡黙なスタイルも、アメリカ打線の調子を狂わせた。

 今大会で一気に評価を高めた右腕も、卒業後はすでに社会人野球界に進むことを決めている。もちろん、プロ入りをあきらめたわけではない。「ドラフトで評価されている大瀬良(大地、九州共立大4年)、杉浦(稔大、国学院大4年)の真っすぐを中心に、良いものを見た。このレベルにならないと、上位候補にはなれないのだと分かった。3年後には上位指名で行けるように、頑張りたいです」

 社会人入りの大卒選手のドラフト解禁は2年後。関谷が言う「3年後」とは、今年も含まれている。言葉の端々に、意識の高さが垣間見えた。

PROFILE
せきや・りょうた●1991年5月10日生まれ。神奈川県出身。180cm82kg。右投右打。
長沢小2年から白真少年野球部で三塁手として野球を始め川崎市大会準優勝。
日大三中時代はボーイズ・麻生ジャイアンツに在籍(遊撃手兼投手)して全国大会出場。
日大三高では2年春から投手専任、同夏からエース。3年夏は西東京大会を制し、甲子園では2回戦進出。
明大では1年春から登板して、3年春から先発定着。今春は3勝を挙げ3季ぶりのリーグ優勝に貢献。
日米大学選手権では初めて代表入りした。
東京六大学リーグ通算40試合、8勝4敗、防御率2.15。
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