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先輩・高山俊の練習パートナー 明大・佐野恵太が大暴れ

 

裏方に支えられた練習の虫が打撃タイトル三冠のチャンス


佐野は東大、慶大との2カードを終えて7試合、25打数10安打、2本塁打7打点と、三冠王も夢ではない/写真=大賀章好


 3季ぶりの東京六大学リーグV奪回を目指す明大が、苦しみながらも首位に立っている。

 開幕からの2カードを終え、4勝2敗1分けで勝ち点2。勝ち点のかかった東大3回戦では12対3、慶大4回戦では18対0と打線が奮起し、明大らしい粘り強さを発揮している。

 その打線を引っ張っているのが、左の主砲・佐野恵太(4年・広陵高)だ。第3週終了時点で打率.400(リーグ4位)、2本塁打(同2位)、7打点(同トップ)と、三冠王も狙えそうな勢いだ。佐野は「本塁打を打っていきたいけど、狙って打つのではなく、安打の延長が本塁打だと心がけてやっていこうと思います。三冠王?結果的にそうなればいいですね」と控えめな笑みを浮かべた。

 慶大4回戦では3対0で迎えた7回に、左腕の清水洋二郎(3年・函館ラ・サール高)から「人生で初めて」という満塁本塁打をバックスクリーンへたたき込んだ。試合後、佐野は「チームの勝ちが呼び込める打撃ができてよかった」と喜んだ。そして、「日吉のおかげです。本当にありがたい。結果を出して恩返ししたいと思っています」と言った。

 日吉達也(4年・静岡高)は、明大の主務。普段は裏方としてチームを支えている。だが、明大には左投げの選手が少ないため、東大の宮台康平(3年・湘南高)や慶大の小原大樹(4年・花巻東高)、清水といった左腕対策として、高校時代に130キロ左腕だった日吉が打撃投手を買って出ている。慶大4回戦の当日、試合前に神宮球場で行われたフリー打撃でもユニフォーム姿で「登板」し、30分間投げ続けた。佐野の言葉を伝えると、日吉は笑顔になり、「いやあ、うれしいですね。左投手から打ってくれたというのも、うれしいです」と言った。

偉大な先輩から受け継いだ取り組む姿勢


 もう一つ、佐野の好調を支えているのが、ルーティン化した練習だ。毎日、夕食を食べた後、自主練習として200本のティー打撃と50本の素振りをする。朝は100本のティー打撃をしてから試合へ臨む。昨年まではその日の調子によってメニューや数を調整していたが、今年は同じことを繰り返している。

「毎日同じことをやっていると、10本もバットを振れば『今日はいつもとバットの出方が違うな』というのが分かります。それをいつもの感覚に戻していけるようにしています」

 練習に取り組む姿勢は、1学年上の高山俊(現阪神)から受け継いだものだ。佐野は昨年まで高山の練習パートナーを務めていた。

「高山さんは雲の上の人。技術は足元にも及ばないと思いながら、一緒に練習させてもらいました。あれだけすごい選手が身近にいたことで、目標が定まりました」

 昨秋後、高山から打撃用グラブやアンダーシャツをもらった。「それを使って練習していると、高山さんと一緒にやっていたことを思い出す」と、佐野は顔をほころばせた。

 今春の東京六大学リーグは混戦模様。3週を終えた時点で、勝ち点2で首位に立つ明大を慶大、立大、早大、法大が勝ち点1で追っている。

 優勝するために、そして日吉に報いるために。残りの3カードでも、佐野が打ち続けなければならない。(取材・文=佐伯要)

PROFILE
さの・けいた●1994年11月28日生まれ。岡山県出身。177cm 77kg。右投左打。彦崎小1年時から彦崎少年野球団で投手として野球を始める。灘崎中ではヤングリーグ・倉敷ビガーズに在籍し、投手兼三塁手で全国大会準優勝、ジャイアンツカップ出場。U15日本代表にも選出された。広陵高では2年春からベンチ入り(遊撃手)し、3年春から捕手。同夏は県大会3回戦敗退で、甲子園出場経験なし。明大では2年春からベンチ入り。東京六大学リーグ45試合、打率.265、5本塁打、25打点(4月24日現在)。
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