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堀内恒夫の多事正論

堀内恒夫コラム「『偽投』禁止を野球の五輪復活のきっかけに」

 

 週末からオープン戦が本格化した。選手は実戦でさらなる技術の向上を目指すのはもちろんだが、試合で確かめなければならないこともある。その1つがルール変更の確認だ。

 今年から投手の三塁への偽投(投手板を踏んだままけん制のふりをする動作)が禁止される。ボークと疑われることと遅延行為を防止するためだ。「スポーツは正々堂々とやるもの」というのが私の持論だから、この規則改正には大賛成だ。そもそも「偽投」とは人をだますやり方で、アンフェアだ。私の若いころにはなかった。このけん制がなぜ許可されたのかも分からない。ベテランになって練習をしたことはあるが、試合ではやったことがない。

 笑い話だが、三塁へのけん制に苦い思い出がある。ある試合で長嶋さんが三塁からけん制のサインを送ってきた。グラブから人さし指を出して立てたら「けん制しろ」のサインだ。私は素早く三塁へけん制球を投げた。ところが、投げたボールは三塁ベース上を通過して、フェンスまで転がっている。長嶋さんが三塁ベースに入っていなかったのだ。長嶋さん、マウンドにやって来て言った。「ホリ、何でけん制したんだ?」「何でって、ミスターがけん制のサインを出したからじゃないですか」「あれは、グラブでお前に頑張れよと言っただけだ」

 ミスターは涼しい顔をしていた。私はそれ以来、三塁へは間を取るための、ゆっくりとしたけん制しかしなくなった。

 もう1つ、長嶋さんのことを思い出した。阪神の元監督、安藤統男さんから聞いた話だ。安藤さんは打率3割をかけていた1970年のシーズン終盤、長嶋さんから声を掛けられた。「アンちゃん・・・

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レジェンド堀内恒夫の球界提言コラム。

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