四国が誇るスピードスター 今年こそ夢の舞台へ 昨年のパ・リーグ首位打者を獲得したロッテ・角中勝也。 今春の第3回WBCにも出場したヒットメーカーを輩出し、毎年NPBへ選手を多く送り込むのが四国アイランドリーグplusだ。 4月に開幕した同リーグで、俊足を武器に最高峰の舞台を目指す徳島・吉村旬平。指名漏れを経験した屈辱をバネに、今年こそ夢を実現してみせる。 恩師からの助言 練習生からのスタート 四国アイランドリーグplus(以下、四国リーグ)は今季、創設から9年目を迎えている。昨年、7月に
アレッサンドロ・マエストリが香川オリーブガイナーズから
オリックスへ入団。秋のドラフトでは同じ香川から
星野雄大が
ヤクルト5位、育成ドラフトで
水口大地が
西武から1位指名を受けた。
ドラフトを経てNPBへと巣立っていった選手は、これまで述べ35人を数える。今春の第3回ワールド・ベースボール・クラシックに出場した角中勝也(高知→ロッテ)も、かつて四国リーグから羽ばたいていった1人であることは言うまでもないだろう。若きアイランドリーガーたちは、大舞台に立つことを夢に見ながら、今日も汗にまみれている。
現在、前期リーグ戦の首位争いを続ける徳島インディゴソックスの中堅手・吉村旬平も、ドラフト指名へ期待を抱かせる1人だ。持ち味は50メートル5.7秒の俊足と打撃力である。
5月5日現在、公式戦15試合を終えての成績は打率.333(8位)、リードオフマンとして出塁率.437を記録している。また、ここまで放った20安打のうち、本塁打2本を含む、長打が多いことも特徴。パンチ力抜群で、5月1日の
ソフトバンク三軍戦(雁の巣)では左翼へ今季1号本塁打をたたき込んだ。
光明相模原高時代は当時の本村幸雄監督(現
日本ハム選手教育ディレクター)の二番打者を最重要視する方針により、二番・右翼手を務めた。3年夏の神奈川県大会では4回戦で川崎北高に敗退も、10打数4安打2本塁打の活躍を見せている。
特待生として大学へ進学する道もあったが、本村監督の「お前はプロへ行け!」というアドバイスに従いプロ志望届を提出。だが、指名には至らず、最終的に進路として選んだのが四国リーグだった。
2010年、18歳で飛び込んだ四国リーグでの最初の1年間は練習生だったため、公式戦の出場記録はない。しかし、高知ファイティングドッグス時代に角中を指導した
森山一人コーチ(元近鉄ほか)からスタートの切り方、捕球の仕方など、守備についての基礎をみっちり学んだ。潜在能力の高さは、このころから徳島の首脳陣に高く評価されていた。
本格的に実力を発揮し始めたのは昨シーズンのことだ。公式戦全80試合にフル出場。7月の首都圏遠征(フューチャーズに3連勝)、10月に宮崎で行われたフェ
ニックス・リーグにも四国リーグ選抜メンバーの一員として招集されている。
「去年は(80試合の)しんどさよりも喜びの方が大きかったですね。楽しくてしょうがなかったです。練習生のときに、同じ外野手で練習生だったヤツと外野を走りながら『いつか、ここに立ちたいな』って話していたので。ナイターも新鮮でした」
自分に足りないもの スピードを最大限生かす 1年間のアピールを終えた昨年10月25日、徳島からドラフト最終候補に残った3選手の1人として指名の吉報を待った。3球団が興味を示してはいたが、最後まで名前を呼ばれることなく「選択終了」となる無念さを経験している。
「『いける!』という確信はなかったですけど『かかってほしいな』という期待がありました。水口さんと星野さんが指名されたことを知って、すごく悔しかったです」
自分には何が足りないのか。それを精査し、さらにレベルアップした姿をスカウトに見せなければ今年のドラフト指名はない。現在、そんな勝負を懸けた1年に挑んでいる。
「島田さん(直也、現徳島監督・元日本ハムほか)に『お前が去年、プロへ行けなかったのは“送球”だと思う』と言われたんです。足はアピールできた。でも、送球でランナーを刺す機会が去年は1、2回しかなかった。シングルヒットのときに内野へ返すだけのカットボールがポーンと浮いたり、力み過ぎてしまう送球をしていたので」
あるNPBのスカウトは、吉村を評してこう語る。「セールスポイントはスピード。ただ『そのスピードを100パーセント生かしているか?』と言えば、そこまで生かせてないんじゃないか。走塁技術をもっと磨いて、打撃ももっと力強くなれば。左打者でスピードがあるなら、四国リーグで打率3割は残さないと。左(打者)だから内野安打もセーフティーバントある。そういうところでアピールをしてほしい」
明確な課題がいくつか見つかっている。スローイングを中心とした守備力の向上。そして、持って生まれたスピードを生かしながら、攻撃力と機動力をさらにレベルアップさせ、昨年よりもたくましくなる。シーズンを通じて成績を残すことはもちろん、すでに自主トレ時から課題の克服に努めている。昨年、打率.245に終わった打撃も、
長内孝コーチ(元
広島ほか)、根鈴雄次アシスタントコーチ(元エクスポズ・マイナーほか)らの指導により著しく改善された。
▲課題とされていた打撃は3年目の今季、確かな進歩を見せている
「去年は(バットが)かなり遠回りしていた。そんなに速くない球なのにどん詰まりになることもありました。今年は最短の軌道で来た球を弾くことができています。より正確に」
ウエート・トレーニングの効果も出始めている。「『背筋がしっかり形付いた』って、キクさん(菊地悦子徳島トレーナー)に言われたんですよ」と笑顔を見せる。
ドラフトまであと6カ月を切った。「今年こそ」。その思いは強い。
PROFILE よしむら・しゅんぺい●1991年6月29日生まれ。神奈川県出身。178cm82kg。右投左打。
光明相模原高から10年に四国リーグ・徳島入団。練習生を経て11年5月に公式戦初出場。
12年の開幕戦に二番・中堅手としてスタメン出場。以来、シーズンフル出場を果たした。
昨年は打率.245、26打点、3本塁打、18盗塁。
今季は開幕から15試合を終えて打率.333(8位)。9打点、背番号00