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逸材発掘!ドラフト候補リサーチ2013

岩崎優[投手・国士舘大]

 



全国屈指のレベルを誇る東都大学リーグ。“戦国東都”の異名を取る理由は、一部のみならず二部でも高いレベルの試合が繰り広げられているからだ。そんな東都二部リーグで、今春リーグトップの60奪三振をマークしたのが国士舘大・岩崎優だ。静岡県の無名校からやって来た長身左腕は、さらなる進化を求めて次のステージへの歩みを熱望している。

サッカー王国の野球一家

 184センチの長身に、最速144キロの直球を生み出すがっちりとした下半身。今春の東都二部リーグ戦で、リーグトップの60奪三振をマークした国士舘大・岩崎優は、その逞しい体格に似つかわしくない温和な表情で、プロへの思いを口にする。

「野球をやっている以上、高いレベルで自分の力を試してみたいと思いました。高校まではそんなことは夢にも思っていませんでしたが、国士舘へ来て、高いレベルを経験して、もっともっと上のレベルでプレーしてみたい気持ちが芽生えたんです」

 静岡県に生まれ、清水四中で軟式野球部へ入部して白球に出会った。静岡市立不二見小時代にスイミングスクールへ通って鍛えた高い身体能力は、野球でも存分に生かされる。中学時代は、投手、一塁手、外野手としてプレー。左腕から繰り出される力強い直球と、パワーあふれるバッティングが持ち味だった。

 そして、高校は清水東高へ。春夏通算4度の甲子園出場経験があり、慶大、大洋で活躍した山下大輔(現DeNA二軍監督)の母校でもある同校だが、全国的にはサッカーの名門校として知られている。現役日本代表の内田篤人(シャルケ)をはじめ、武田修宏(元ヴェルディ川崎ほか)、高原直泰(現東京ヴェルディ)ら、数々の名選手を輩出している。岩崎が生まれ育った清水市(現静岡市清水区)はJリーグ・清水エスパルスが本拠を構えるなど、県内でも有数のサッカー地帯だ。そんな中、野球を選んだ理由は、家族の存在が大きかったという。

「父も野球経験者で、兄も弟も野球部に所属するほどの野球一家なんです。母も実業団でソフトボールの選手だったと聞きました。サッカーをやりたいと思ったこともなく、自然と野球を選んでいましたね」

 1年秋から野手としてベンチ入りし、2年秋から背番号1を託された。しかし、高校3年間での最高成績は県大会3回戦止まり。「エース兼四番」で臨んだ3年夏も、同2回戦で清水商高に敗退した。

「名前がある高校ともほとんど試合をしたことがなかったので、自分がどの程度の選手なのか分からなかった」と話すサウスポーだったが、その素質を見抜いた国士舘大・永田昌弘監督に誘われ、進学を決意する。

「まだ野球をやりたかった気持ちもあり、自分を必要としてくれたことがうれしかった。監督の下で、もっとレベルアップしようと」

プロ入りへ向け手に入れた武器

 岩崎が入学した2010年当時、チームは東都一部リーグに所属していた。“戦国東都”の異名を取り、全国屈指のレベルを誇る同リーグ。当初は、チームメートを含む個々の能力の高さに戸惑いを隠せなかったという。「名簿を見ても、甲子園経験がある高校の選手ばかりで、自分がこの中でやっていけるのかと……」(岩崎)。だが、その不安はマウンドへ上がることで徐々に解消されていった。

 1年秋にチームは二部に降格。二部からのリ・スタートを切る中で、岩崎はリリーフとして居場所を得た。スリークオーター気味のフォームから投じるキレのある直球と、カーブ、スライダー、フォークと多彩な変化球を操る。2年春から3年秋までの4シーズンで32試合に登板し、6勝3敗、防御率1.75の成績を残した。昨秋マークした防御率・0.94はリーグ2位の好成績だ。

 さらに、自身にとって励みになる出来事があった。昨年のドラフト、国士舘大OBでJX-ENEOSに所属していた屋宜照悟が、日本ハムからドラフト5位で指名されたのだ。「屋宜さんは僕が1年生のときの4年生。一緒にプレーしていた先輩がプロへ行ったことで、『頑張れば自分にも届くかも』と思えるようになりました」

 迎える大学ラストイヤー。プロ入りへ向け、岩崎は1つの武器を修得した。

「スクリューに近い、チェンジアップですね。プロの試合を見ていても、左ピッチャーでこのボールを投げる人が多い。バッターの右左関係なく的を絞りづらくなるし、投球の幅が広がると思いました」

▲昨冬にチェンジアップを修得。投球の幅が広がり、今春の東都二部リーグ戦ではリーグトップの60奪三振をマークした



 その言葉どおり、今春はリーグ戦12試合中11試合で登板する大車輪の活躍を見せる。先発5試合、救援6試合でマウンドへ上がり、4勝2敗、防御率1.60、リーグトップの60三振を奪い、スカウトの注目を集めた。

 一方で、悔しさも残っている。今春から二部に降格してきた東洋大とのカード、指揮官の期待を背負って1回戦の先発を任されたものの、6回2失点(試合は1対4で敗戦)。チームは続く2回戦も落とすと、翌週の日大も連敗で勝ち点を落とし、春はリーグ3位にとどまった。春のリーグ戦を制し、今秋から一部に参戦している拓大に連勝していたことを考えると、「あそこで勝っていれば……」と悔やまれる一戦となった。「(東洋大は)ここぞの集中力が違いました。二部にもドラフト候補の選手はたくさんいるし、彼らを抑えて、チームを一部に上げて、最高の形で大学生活を終わりたいです」

 秋季リーグ戦開幕前の9月7日にプロ志望届を提出。自身の気持ちは固まった。

 東農大に2連勝というこれ以上ないスタートを切った大学最後のリーグ戦。“戦国東都”にひしめく並み居るライバルたちをねじ伏せ、最高のフィナーレにしてみせる。

PROFILE
いわさき・すぐる●1991年6月19日生まれ。静岡県出身。184cm82kg。左投左打。静岡市立清水不二見小時はスイミングクラブへ通い、清水四中1年時に軟式野球部へ入部。投手兼一塁手兼外野手としてプレーし、清水東高では2年秋からエース。3年夏は県大会2回戦で敗退した。国士舘大では2年春から公式戦に登板。ストレートの最速は144キロ。変化球はカーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップ。二部通算成績は44試合10勝5敗、防御率1.68(9月22日現在)。

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