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逸材発掘!ドラフト候補リサーチ2013

石川柊太[投手・創価大]

 

抜群のキレを誇る発展途上の大型右腕

プロ1年目で最多勝、勝率第1位投手賞のタイトルを手中にした小川泰弘(東京ヤクルト)。
その小川を輩出した創価大から、今年も1人の逸材がプロ志望届を提出した。
全国的には無名ながら、183センチの身長と手足の長さを最大限に生かしたトルネード投法から放たれる球は抜群のキレ。
監督・コーチが「小川以上の逸材」と評す石川柊太は、試行錯誤を続けながらさらなる高みを目指している。



ひと目惚れした腕の振り

「近所のおじさんに、アイスをあげるからついておいで」と誘われ、小学2年時に野球を始めた創価大・石川柊太。小、中と軟式野球のクラブチームに在籍したが、特にこれと言った実績を残すこともなく、都立総合工科高へ入学する。そこで1999年に都城東高を甲子園に導いた有馬信夫監督の下、都立校ながら3年春夏と都8強入りの実績を残した。ただ、全国的には全く無名の右腕。自らの意思で創価大のセレクションを受けた石川は、同大へ歩を進めることになる。

 創価大・岸雅司監督の第一印象は芳しくなかった。「野球をやる体、そして顔つきではなかった。これは厳しいんじゃないかと思いました」と当時を回想する。ところが、佐藤康弘投手コーチは「ひょろっとした体型ですが、この体型でこの球はすごい」と指揮官に猛プッシュ。結果的に、佐藤コーチの投手育成に全幅の信頼を置く岸監督が獲得を決定し、推薦での入学が決まった。

「コーチに就任してから、そして私が現役時代にともにプレーしてきた選手の中でも素材は一番です」

 そう太鼓判を押す佐藤コーチは、創価大を卒業後、社会人野球のプリンスホテルで活躍し、92年のバルセロナ五輪日本代表に選出。伊藤智仁(元ヤクルト)、小久保裕紀(元ソフトバンクほか)らとともに、銅メダル獲得に貢献した。その佐藤が「杉浦(正則、元日本生命)ほどの完成度はありません。でも石川の良いときだけを見れば、杉浦や伊藤よりも上です」と評している。

 最大の魅力は「腕の振り」にある。「あれだけ腕が振れて、スピンがかかった球を投げられる投手はいませんね」(佐藤コーチ)

 入学前に右ヒジを痛めてしまった右腕だったが、「プライドもなく、がむしゃらだった」と地道に体を作った。幸いにも当時の投手陣は1年先輩である小川泰弘(現東京ヤクルト)や、関根裕之(現JR西日本)らで安定しており、「大器晩成型」の石川は、実戦で投げ急ぐこともなく、じっくりと育成された。そして、この3年半で10キロのウエートアップに成功。3年時から導入したトルネード投法もピタリとハマり、スピンが利いた球を投げられるようになった。威力十分のストレートと、大きく縦に割れるスライダーは相手打者の脅威だ。その球質は「石川の投球を見ておけ」と、佐藤が小川に対して指示したほどだという。

 その証拠は右手中指に深く刻まれている。普通の投手であれば、中指の真ん中あたりにマメができる。これが石川の場合、中指の外側(薬指側)にあるのだ。また、球が指にかかり過ぎることで爪も真っ黒に変色。キレを生み出した代償は当然あり、ストレートの最速は3年時に計測した149キロから、今年に入って145キロ前後を推移している。現在も「投げる際に痛みはあるが、そうは言ってられない」(石川)という状態で、春は東京新大学リーグの開幕にも間に合わず、秋は2回戦の先発として開幕を迎えている。

伸びしろは小川以上

 4年間で急成長を遂げたと言っていい石川だが、現在は「良く言えば2本柱。悪く言えば、試合前日ぐらいまで先発を決めかねる」と岸監督が形容する投手陣の一角に過ぎない。石川も「できれば自分がしっかりとした柱になりたい」と今夏に話していたが、秋も良いボールと悪いボールがはっきりとしており、試行錯誤を続けている。

 そんな状況でありながらも、東京新大学リーグ11試合に登板していまだ無敗(10月7日現在)。もちろん、創価大野手陣のレベルの高さも影響がないわけではないが、悪いときは悪いなりにまとめ切れているとも言える。出遅れた春ではあったが、初の全国舞台となった大学選手権1回戦(対四国学院大)で5安打完封勝利。登板がなかった2回戦の明大戦でチームは敗退したものの、自身は大きな自信をつかんだ。

▲今春行われた大学選手権では1回戦の四国学院大戦に先発し、5安打完封勝利を挙げた



 口調はおっとりとしており、オフの日には、ファンである「ももいろクローバーZ」のライブに足を運ぶなど、素顔は普通の大学生とそう変わりはない。だが野球に対しては、「試合に入る際も、一気に気持ちを入れられますし、失敗も引きずらないタイプ」と話す。また岸監督も「小川に象徴されるように、ウチの選手には浮ついたところがないし、野球の厳しさを知っている」とプロへ自信を持って送り出す構えだ。

 新人で単独最多勝が決まった小川に対しては「練習や私生活が本当に徹底していて、簡単に影響を受けたとは言えない」と話すが、「そうした選手がプロで活躍できることを証明したのは励みになる」とも言う。向上心も先輩譲りであり、ノーラン・ライアン(元レンジャーズほか)を参考とした小川のように、日本人投手だけでなく、ジャスティン・バーランダー(タイガース)やクレイグ・キンブレル(ブレーブス)らの動画もチェックし、取り入れられる要素があるかを普段から研究しているという。

「10球中1球か2球は小川よりすごい球を投げる。下半身をしっかり使える小川といまの石川を足して2で割れば、20勝投手だよ」と、岸監督は笑いながら成長を見届けてきた。

 まだまだ粗削りな大型右腕は、ドラフト下位、もしくは育成ドラフトでの指名が有力だ。だが石川は、「ここに来たときも自分が一番下だった。この4年間のように一つひとつのことを地道に取り組み、プロで活躍できるようにしたい」と大学入学時の自身に姿を重ね合わせ、プロの舞台での大きな飛躍を誓っている。

PROFILE
いしかわ・しゅうた●1991年12月27日生まれ。東京都出身。183cm80kg。右投右打。小学2年時に元芝ハヤブサで野球を始め、中学時代は水神ファイターズ(軟式)を経て都総合工科高へ進学。高3春に都8強、夏に東東京大会8強に進出。今春の東京新大学リーグ戦でリーグ戦初勝利、大学選手権では1回戦の四国学院大戦で5安打完封。東京新大学リーグ通算成績は11試合7勝0敗、防御率0.96(10月7日現在)。

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