野球で同時はセーフということになっていますが、規則書のどこにも明示されていません。同時はセーフの根拠を教えてください。

　確かに同時はセーフとは規則書のどこにも書かれてありません。昭和30年代の規則書には日本注として「同時はセーフである」とありましたが、いまは消えています。

　1959年7月19日に後楽園球場で行われた大毎対西鉄戦で、同時はアウトかセーフかで紛糾したことがあります。抗議した西鉄の三原脩監督は、出場審判ではラチがあかぬとみて控え審判室にいた二出川延明審判に「規則書で確認せよ」と詰め寄ると、二出川審判の答えが、あの有名な「おれがルールブックだ」でした。

　同時はセーフの根拠になるのは、打者アウトの規則を並べた野球規則6.05(j)なのです。そこには、

「打者が第3ストライクの宣告を受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁を触れる前に、その身体または一塁に触球された場合」

　とあります。

　打者が一塁に触れる前に触球されたらアウトなのですから、同時またはその後に触球されたらアウトではないと解釈できるわけで、同時はセーフなのです。

　それなら、次のようなケースはどうでしょう。一死二、三塁で打者が中飛を打ったとき、三塁走者は本塁へスタートしましたが、二塁走者も三塁に走りました。バックホームしても間に合わないと判断した中堅手は三塁に送球し、二塁走者をアウトにしましたが、球審はこの三塁でのスリーアウトと同時に、三塁走者は本塁を踏んだと判断しました。

　この場合は、スリーアウト目が同時といっても得点は認められません。得点の規則である4.09(a)に、

「3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁に進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される」

　とあります。「イニングが終了する前に」ですから、終了と同時、またはその後に本塁を踏んでも得点とはならないのです。