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山崎夏生のルール教室

プレーしたのに「タイム」で打ち直し 不運あったが今後に生かしたい/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

審判はより大きなジェスチャーで伝えていきたい


【問】7月9日の日本ハムロッテ戦(エスコンF)の9回表無死一塁でロッテの石川慎吾選手が中前打を放ちました。さあ、チャンス到来と思ったら球審に呼び戻されて打ち直し。直後の場内放送での説明では、打つ直前に三塁審判からタイムがかかっていたのでプレーは無効とのこと。投手は正規の投球をし、それを打ったのにこのプレーは認められないのでしょうか? 打ち直し後の送りバントは併殺打となり、ロッテファンは大ブーイングでした。

【答】結果がどうあれ、ボールデッドの状況下ではすべてのプレーが無効です。そして、試合停止を意味する「タイム」が有効になるのは選手やベースコーチが審判に求めたときではなく、審判がコールをした瞬間です。ただし、投手が投球動作に入ってしまえばもうタイムをかけることはできません。この投球動作とは、サインを見ている状態やセットポジションでの静止状態は含まず、あくまでも投球のために体の一部が動き出した瞬間を指します。

 タイムをかける権限は球審のみならず塁審にもあります。そして試合を停止するのですから全審判員が同調し、球場にいるすべての選手や観衆にも明確に分かるよう大きなコールとアクションで示す必要があります。今回のケースでは投手がセットポジションでの状態時に三塁ベースコーチがサイン確認のためにタイムを求め、それに三塁審判が応じました。ところがそのコールは大歓声にかき消され、球審からは右打者だったために三塁審判のアクションが死角に入っていたようです。一、二塁の審判の視線も投手と打者に集中していた、という不運も重なりました。だからと言って、そのタイムが無効になることはありません。審判団の連携に問題はあれど、以後の処置は正しいものでした。

一塁上で安打が無効となったロッテ・石川慎


 ただ、今後こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、選手やコーチにお願いがあります。実は大歓声のため、いかに大きな声を出そうとも審判のコールが聞こえないことはしばしばあります。ですから投球動作を開始する直前でのタイム要求はできるだけ控えてもらいたいのです。と同時に、球審はすべての塁審の視界に入っていますが、塁審同士は見えていないこともあります。よってできるだけ大きなアクションでその動きを見せる工夫も大切ではないかと。

 たまたまですが、後日の試合では一塁審判が大きくフィールド内に入り込んでタイムをコールする姿が印象に残りました。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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