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山崎夏生のルール教室

2024シーズン主な変更点 注目されたピッチクロック導入なし/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

試合時間短縮に大きく役立ったピッチクロック。写真は2018、19年ア・リーグ最多安打打者でブルージェイズのウィット・メリフィールド[写真=Getty Images]


【問】以前に当欄で日本の「公認野球規則」はアメリカの「OBR(Official Baseball Rules)」より1年遅れで改正される、という記述がありました。確かプロアマ合同の野球規則委員会が年度末に開催され、そこで審議決定されるという内容だったと思うのですが、その後の進捗状況はどうなっているのでしょうか?

【答】その会議は例年より早い11月29日に行われ、9項目の改正が決まりました。詳しくは12月15日に各団体から発表されている資料をご参照ください。主な改正点は以下のとおりです。

 まずエスコンフィールドの本塁後方のファウルゾーンが60フィートに満たない点で2023年開幕前に大問題となりましたが、この条文で使われている「recommended」の訳を従来の「必要とする」から「推奨する」に変更します。これにより同球場はルール的にも無問題となります。

 次にベースの拡大(15インチ→18インチ)と極端な守備シフトの変更禁止ですが、これらの条文は変更するものの「我が国では、プロ、アマとも適用しない」という【注】をつけました。前者は現実問題として公式戦が行われるような球場は全国で7000以上もあり、チーム数にしても1万以上あるわけですから、とても即時には対応できないからでしょう。後者は現時点では我が国では極端な守備シフトを敷くことはまれで、必要性がないという判断がなされたのです。

 一番注目されていたのが「ピッチクロック」ですが、プロ側は11月22日に行われた12球団オーナー会議の席上で採用見送りとなっていました。MLBでは今季の試合時間が24分も短縮され絶大なる効果は実証済みなのですが、やはり現場からの反対の声が相当にあったようです。まず選手たちはペナルティー付きで時間管理されると自分のペースが守れずにプレーに集中できないということ。球団もあまりにも早く試合が終わってしまうと、来場したファンの満足度と物品販売への影響が出るのではないかという懸念です。

 その代替案として「打者交代30秒以内」を徹底させるという方針が提示されました。今季は平均で36.9秒かかっていたこの間合いを、30秒以内に収めれば単純計算でも毎試合70〜90人の打者が打席に入るのですから、今季の平均試合時間3時間7分が2時間台になるだろうという発想です。とはいえ、この反則規定はなく打者の自覚に任せるのみです。ちなみに社会人野球はすでにピッチクロックを採用しており、これを各団体の「内規」とするのには何ら問題はありません。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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