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山崎夏生のルール教室

審判はシーズンオフも研鑽続ける 学び教えることこそ成長の種/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

10回目を迎えたNPBアンパイアスクールや各地で行われる講習会など学ぶ機会は多い。休みはあるが完全なオフではない


【問】シーズンオフとなり、野球のない寂しい日々です。とはいえ、年が明ければ新入団選手の希望あふれるコメントや、選手たちの自主トレ情報なども見かけるのですが、NPB審判の方々はどう過ごしているのでしょうか。11月から1月まではやはり完全休養、自宅でノンビリですか?

【答】いやいや、審判も選手同様に1年契約の個人事業主で、「力なきものは去れ!」の厳しい世界です。怠け者は淘汰されますし、この期間こそシーズン中にはできない自己研鑽に当てています。

 まず日々のトレーニングは当たり前のことで、基本的には瞬発系よりもスタミナ系の体力をつける走り込みをし、見映えのする均整の取れた体形を維持するための筋トレもしています。これは個々の課題ですが、12月にはNPB事務局に全審判員が集合し、シーズン中にあった難プレーやトラブルの対処法、実際にあったリクエスト画像を見ながらの再検証などもします。ポジショニングはどうだったか、場内放送はうまく説明できていたか等々、常に次シーズンへのベストを求め活発な論議が行われます。

 また10月にはMLB主催のフォール・リーグ(3Aクラスの有望選手や審判を集めての教育リーグ)にNPBからも中堅審判を毎年2人派遣しています。8年目以下の育成審判を含む若手15人ほどが宮崎でのフェニックス・リーグ(秋季教育リーグ)に3週間派遣されるのはもう恒例行事です。ほかにも昨年11月中旬から行われているオーストラリアン・ベースボールリーグには4人の中堅審判が、1月初旬からの5週間はアメリカの審判学校に2人の若手審判が派遣されます。もちろん各地で学んだ最新のテクニックはレポートにまとめられ、全審判員の共有財産となります。

 こうして学ぶのも大切ですが、教えることは学ぶことにも通じます。オフにはアマチュア団体の審判講習会に多くの現役審判が出かけ、講師を務めます。きちんとした技術的理論やルール知識なくしてはその場に立てませんから、その経験は自分自身の財産ともなるのです。また2023年で10回目となったNPBアンパイアスクール(12月14〜20日)にはかつての受講生だった若手が、今はインストラクターとして教える立場にもなっています。

 もちろんその隙間を縫うように海外旅行に出かけたり、つかの間の家族サービスを楽しむなどの憩いの時もありますが、選手同様この世界に入ったからには辞めるまで本当のオフはないのだ、という覚悟を全員が持っていますよ。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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