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本誌編集長コラム

プロで生き残る執念

 

 あの日から5年――。懸命の治療のかいなく木村拓也さん(当時巨人コーチ)が天国へと旅立ったのは2010年4月7日だった。広島や巨人で活躍した稀代のユーティリティープレーヤーの命日に、広島対巨人戦が組まれた今年。マツダ広島での試合前、広島の緒方孝市監督、巨人の原辰徳監督らがホームベース上に献花した。

 木村さんが引退した09年オフ、本誌の惜別求人で野球人生を振り返る話をじっくりと聞いたことがある。やはり、印象に残ったのは血のにじむような努力。91年にドラフト外で日本ハムに入団したときは右打の捕手。そこから内外野を守れる両打ちへと自らを進化させたが、その裏には不断の努力があったのは確かだった。

 さらにプロで何としても生き残ろうという執念。そもそも左打ちに挑戦したのも、何も右打ちだけに限界を感じていたわけではない。より、使い勝手のいい選手になろうと考えた結果だ。右打しかできないと、相手が右投手のときに代打を送られる可能性がある。負の要素を消そうと思ったからだ。存命なら、どれほどいいコーチになっていただろうか――。本当に残念でならない。
野球の風

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週刊ベースボール編集長の編集後記。球界の動きや選手に対して編集長が思いをつづる。

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