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岡江昇三郎

オープン戦たけなわだが昔は秋のオープン戦があった。ここでトレードの品定めを。新人の開幕トレードOKの条項だけはよくない

 

秋のオープン戦で長嶋監督[左]がホレ込んだ加藤初[右]は、期待に応えて力投を続けた



 オープン戦もたけなわだが、昔はシーズン終了後の秋のオープン戦というのがあった。「地方のファンのために」という名目だったが、貧乏球団には、入場料収入が貴重だったのかもしれない。

 それとは別に、ここがトレードの値踏みの場になっていたこともあって、各球団のフロント、現場は真剣なまなざしで、相手の選手たちを観察したものだった。

 筆者の印象に残っている「秋オプトレード」は、75年の太平洋→巨人の加藤初投手のケースだ。この年、長嶋茂雄監督率いる巨人は、史上初の最下位に沈んだ。チーム打率が.236(去年よりも低い!)とセ・リーグ最低。この貧打線のテコ入れが最重要課題だったのだが、投手陣も深刻な状態だった。防御率3.53は5位、失点数510は2位と低空飛行ではあるのだが、セーブ数がわずか8というのが最も深刻だった。もちろんリーグ最低。トップの中日は28。巨人は、先発がガツンといかれたら、そのまま敗戦、というパターンだった。チームの勝ち頭は、やっと10勝(18敗)の堀内恒夫では、76年も大苦戦は免れまい。

 そこで、フロントは、加藤に白羽の矢を立てた。この年、8勝11敗、防御率4.30(22位)。数字だけ見ればパッとしないが、この秋に巨人投手コーチに就任したばかりの杉下茂コーチは「こいつは使えるハズ」とこの補強策を喜んだ。

 で、オープン戦で太平洋と対戦すると、長嶋監督に「加藤を見てください」と言った。長嶋監督、「ん?加藤ってだれ?ああ、今日投げるの。オレ知らないんだ」。杉下コーチ、これには苦笑するしかなかった・・・

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プロ野球観戦歴44年のベースボールライター・岡江昇三郎の連載コラム。

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