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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「考え方のエキス」

 

フォークは『真っすぐ科』だから打ちにくいのだが……


 “原点能力”とフォークボールがあれば、メジャーで通用する、メジャーで勝てる、と前号で書いた。その話の続きを、ここで少し。

 アメリカのピッチャーには、日本ほどフォークボールを投げる選手がいない。誰かに一度、「なんで投げないんだ」と聞いたら、「肩を壊すから」と答えが返ってきた。確かに指の間にボールを挟んで投げるのだから、なんらかの負担はかかるだろう。しかし、「フォークを投げると肩やヒジを壊す」とまでくると、“迷信”めいたものを感じる。だが、彼らはそれを信じている。

 フォークがなぜ有効かといえば、スライダー、カーブなどほかの変化球と明らかに違いがあるからだ。フォークは『真っすぐ科』に属する変化球。スライダーは『カーブ科』に分類される変化球。バッターからすると、フォークは途中まで真っすぐできて、そこからポコーンっと落ちるから厄介だ。一方『カーブ科』の球は、だいたい向こうの方から曲がってくるので、バッターはこれを判断する時間がある。

 フォークはよく『伝家の宝刀』と呼ばれる。しかし、この『伝家の宝刀』を備えたピッチャーよりも、キャッチャーにとってはるかにリードしやすいのは、コントロールのいいピッチャーだ。私はいつもピッチャーたちに、「150キロのど真ん中と130キロの外角低め、どっちが打たれないか、考えてみろ」と言い続けてきた。答えは、130キロの外角低め。それが“原点”だ。だから、ピッチャーは「スピードよりコントロール」というのだ。

 ピッチャーはコントロール第一。スピードなんかいらない。それで成功したのが、南海時代の山内新一だった。山内の球は、まず遅い。プロ入団から5年を過ごした巨人では、3年目の1970年に8勝したものの、伸び悩んだ。南海に移籍する前年、72年に至っては、0勝に終わっている。それが73年、南海1年目に私がキャッチャーを務め、瞬く間に20勝を挙げてしまった。

「なんでお前、巨人で勝てなかったんだ」

 聞くと、山内はもともと右ヒジが曲がっていて・・・

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野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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