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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「混セ/最近の野球」

 

弱者が勝ち抜く術は苦しいときに1対0で勝つ


 前半戦のセ・リーグは、とんでもない“団子レース”に終わってしまった。首位で折り返したDeNAが、やっと5割。中日が若干脱落しかかっているようだが、ほぼ6球団すべてに優勝のチャンスがあると言って良いだろう。

 私がヤクルトを率いて優勝を果たした1992年も、混セの年だった。首位・ヤクルトから最下位・中日までが9ゲーム差。首位から4位・広島までが3ゲーム差という“団子レース”。私の就任前まで、10年間もBクラスにいたようなチームである。そのような状況でもなければ、優勝に手が届くはずもない。ここでも何度か書いているが、私はぶっちぎりで優勝できるような戦力を備えたチームの監督を依頼されたことがなかった。いつだって最下位予想の球団からオファーをもらい、苦労する。そういう星の下に生まれついているのだと思う。

 弱者がこういった“団子レース”を抜け出すには、まず小事を大事にすることだ。そこで最も重要になってくるのが、キャッチャーである。弱者が勝つ基本は、「守って攻める」という考え方だ。従って、理想は1対0の勝利。それにはキャッチャーの徹底した打者攻略が必要となってくる。苦しいときに、1対0で勝つ。弱者が勝ち抜くための、唯一最良のチームである。

ヤクルト監督時代の1992年、混戦を制してリーグ優勝を果たした。「守って攻める」考え方で頂点に立った[写真=BBM]



 ところが前半戦のヤクルトは特に序盤、0対1の負けが多かった。ああいう試合が続くと、やがて投手陣が崩れてくる。いつになっても“援護点”がもらえないと、投手の頑張りや粘り強さが消えていくのだ。投打は信頼関係で支えられていることがよく分かる。

 本来、こういうときこそ監督の腕の見せどころである。野球の原理はいとも簡単・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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